カスタマーサクセスの誤解 第3回

ハグカム(東京・渋谷)が運営する、子供向けのサブスクリプション型オンライン英会話教室「GLOBAL CROWN(グローバルクラウン)」は、月間解約率を2021年2月に1.7%にまで抑えた。2016年と比べるとほぼ3分の1。その結果、半年間契約者の継続率は9割という高い数字につながっている。生徒の受講期間に応じて3段構えで取り組んだカスタマーサクセスが、「やめさせない」秘訣だ。

レッスン風景
グローバルクラウンは、子供向けのサブスクリプション型オンライン英会話教室

 このハグカムの月間解約率1.7%という数字はいかほどか。道村弥生社長によれば「他のオンライン英会話教室は試算上、月間解約率は10%」というから、冒頭の数値は極めて低い水準であることが分かる。「ここ最近は2%台後半をコンスタントに出せている。21年2月には1.7%と過去最低値を達成した」(道村氏)と明かす。

GLOBAL CROWNの月間解約率の推移
退会率のデータ
グローバルクラウンは、生徒の受講期間に応じたアプローチで、月間解約率を下げていくことに成功している。※2017~20年は平均値

前回(第2回)はこちら

 グローバルクラウンは、3~12歳を対象とした子供向けのサブスクリプション型オンライン英会話教室。専用アプリを通じてレッスンを提供する。個人向けと、法人向けの2つのサービスを展開する。21年11月時点で、個人向け事業の会員数は約1800人。英会話を教えると同時に日本語で生徒をフォローできるように、2カ国語以上話せる講師を集めている。生徒となる子供の集中力を考慮して、レッスンは1コマ20分と比較的短めだ。

 また、子供が英会話を続けやすいように2つの特徴がある。1つ目は、英会話のレッスンを習慣化しやすいように曜日・日時が固定制である点。リアルの習い事のように契約時にレッスンの曜日・日時を決める。月に10回までは別日に振り替えが可能。もう1つは、レッスンごとに講師が変わるマッチング制である点だ。同じ講師が続くとマンネリ化し、子供のモチベーションが低下する。そのため、あえてこうした制度を取っている。料金は週1回コースで月額9800円からとなる。入会金や教材費は無料だ。

 生徒の親の観点では、これらの特徴から毎回講師や日時を指定してレッスンを予約する手間が省ける。グローバルクラウンは、都市部における共働き世帯の子供への習い事としての需要を想定しており、「子供のモチベーションを維持しつつ、保護者の負担をなくすのが重要」(道村氏)という考えだ。

 それを踏まえると、グローバルクラウンにおけるカスタマーサクセスの「成功の定義」は次の2点に集約される。1つ目は「楽しくレッスンを受け続けて英語を習得できること」で、レッスンを受ける子供の視点だ。2つ目は「レッスンを受けさせる保護者が負担なく、子供の成長が感じられること」と、契約する親の視点となる。この2点を両立することが、ハグカムの契約期間の長期化、ひいてはLTV(顧客生涯価値)の最大化につながる。

オンラインレッスン画面
生徒は専用アプリを通じてレッスンを受講する。その際のモデル画面

ハグカムがぶつかったカスタマーサクセスの誤解

 今でこそ月間解約率が2%を切るなど、カスタマーサクセス巧者のハグカムだが、かつては手痛い失敗を味わったことがある。それは、特集第1回で解説した「カスタマーサクセス=御用聞き」という誤解を裏付ける典型的な例だ。

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