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日産は短期集中で実習生にソフトの知識をたたきこむ

日産は短期集中で実習生にソフトの知識をたたきこむ

日産自動車の頭脳が集まる神奈川県厚木市の日産先進技術開発センター。そのすぐ脇にある研修施設のような小さな建物に、全国から23人の社員が集められていた。彼らが職場の仕事に戻るのは金曜の午前中だけ。そこで行われているのは4カ月間、社員をカンヅメにして未来のクルマづくりに不可欠なソフトウエアの知識を学ぶ「ブートキャンプ」だった。

4カ月の研修も折り返しに近づいたこの日の課題は、「モデルベース開発(MBD)」というプロセスに基づいた車体の制御技術だった。MBDは車を構成する部品をデータ化してコンピューター上で仮想の車をつくっていく手法だ。実物を作る前にシミュレーションを徹底して開発を効率化するために、自動車業界で広く使われ始めている。

実習生がモニターを前にコードを打ち込むと、隣に置くラジコンのような小さな模型のタイヤが動き始めた。パソコンで再現した動き通りにタイヤのステアリングが作動しているのかを確かめるためだ。

リアルとバーチャルを融合させるのが自動車開発の新潮流だ。上司の勧めもありサイバーセキュリティー部門から派遣されてきたという小林功介は「先にコンピューター上で完成度を高めてから実機に落とし込めるので、試行錯誤を早く回せる」と手応えを語る。

4カ月の研修では自動車開発向けソフトウエアの基礎から始まり、MBDや量産ソフトの開発までを短期集中でたたき込まれる。研修で使われるテキストは14冊で2000ページ以上に及ぶ。内容は極めて専門的で、研修生は小林のようにソフトウエアに知見がある者が多い。リスキリングというよりアップ・スキリング(スキルの向上)に近いと言うのが正確かもしれない。

小林たちは研修の13期生にあたる。日産は2017年からソフト専門のブートキャンプを続けている。1000人の専門人材を育成するのが当面の目標だと言う。

背景にあるのは、自動車産業を取り巻く「100年に一度」と言われる構造転換だ。それを物語るのが自動車に実装されるソースコードの行数だ。衝突回避や自動走行などコンピューター制御の技術が実用化されるに従って飛躍的に増え始めている。

数え方は各社で異なるようだが日産の場合、01年時点で230万行程度だったのが10年代に入って増え始め2月に発売した電気自動車(EV)「アリア」では6500万行に達した。EVをベースに自動運転や車内のインフォテインメント(情報娯楽)が進化すれば、今後は指数関数的に伸びる事態が想定される。

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