新規事業成功、鍵はデータより信念 部下にチャンスをブラザー工業 小池利和会長(下)

ブラザー工業の小池利和会長(名古屋市瑞穂区)

ブラザー工業の小池利和会長は「人とのつながり」が仕事の基盤だと考えている。社内では部署や上下の壁を減らし、互いのコミュニケーションを促すことを重視してきた。従業員からは「テリーさん」と愛称で呼ばれる。愛称を冠した社内の研修やブログも定着している。米国駐在時代の自分の経験も踏まえ、ことあるごとに「失敗を恐れるな」と呼びかけ、チャレンジする重要性を説く。

――仕事を進めるうえで、何か衝突が起きたときはどうやって解決していますか。

「新たな仕事を生み出そうとするときは、必ず反対勢力がいるものです。相手を説得するには、その製品やサービスで顧客がどれほど喜んでくれるか、事業がどれほど大きくなるかを説明することが重要です。共感してくれる人を増やさなければなりません」

――マーケティングなどのデータを使って、理論で説得するのが正攻法でしょうか。

「データがあるから必ず売れるというわけではありません。データはサポートはしてくれても、説得材料のメインにはならないと思います。それなら、データサイエンティストを増やして、成功確率の高そうなものからやればいいという話になります。データよりも大事なことは、自分がこれなら売れる、これなら売りたいと思える信念です」

――信念が伝わらなかった経験はありますか。

「失敗は数え切れないほどあります。そのひとつが1990年ごろ、インクジェット技術に強い米企業と提携し、新たなプリンターの開発に挑んだことです。米で販売部隊を、日本で開発部隊を立ち上げ、毎月のように帰国して議論を重ねました。しかし、新商品の販路として見込んでいた大口顧客から突然『買わない』と拒否され、プロジェクトは破算しました。一花咲かせる夢が吹き飛びました」

「それでも失敗からの学びもありました。提携した米企業は、市場が大きいオフィス向けとは異なる印刷分野を対象にしていたのです。ニッチな市場でも商機はあるんだなと気付きました。それが後にオフィス以外の市場に参入する契機にもなりました」

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