サツマイモとお茶が香る芋焼酎 鹿児島「知覧Tea酎」
緩やかな丘陵地に茶畑が広がる鹿児島県南九州市。茶葉の産出額は全国トップで、特に主力ブランドの知覧茶は全国でも知名度が高まっている。知覧醸造(同市)が2018年に発売したのが、地元特産のサツマイモと茶を組み合わせた本格芋焼酎「知覧Tea酎」だ。
Tea酎は国内外のコンクールで高い評価を受けている。今年9月に仏で開かれたコンクールでも、最高評価のプレジデント賞を受賞。審査委員長に「大変美しい複雑感のある香り」と評された。
1919年創業の知覧醸造の本社・蒸留所は、茶とイモの畑に囲まれている。4代目の森暢社長がグラスに注いでくれたTea酎を嗅いでみる。
まず市内で採れた黄金千貫というサツマイモ由来のイモの香りが立ち上がる。ただ、ガツンとくるイモ臭さはなく、ほんわかした感じだ。その後、茶のすっきりした、かすかな甘みも感じさせる香りに気がつく。
ロックもソーダ割りもいける
コンセプトは飲み飽きないお酒で、味わいもやさしめにしてある。「飲み方はロックでもいいし、ソーダ割りもおすすめですよ」と森社長はほほ笑む。前出のコンクール審査委員長も「ソーダで割っても特徴を失うことなく、むしろさらに風味が広がる」とハイボールを高く評価している。
Tea酎の最大の特徴は二次もろみという作業工程で、細かくした知覧茶の一番茶を入れる点だ。小売店で売れば100グラム千円くらいの茶葉を使うのは、二番茶以降だとうまみも香りも違ってくるためだ。自社で東京ドーム1個分くらいの茶畑を管理しており、ぜいたくな使い方ができる。
開発のきっかけは、森社長が焼酎のお茶割りを店で飲んだとき、「おいしかったので自分で作ろうと思ったが、どうしてもお茶が強くなりすぎた」ことだ。そこから、知覧特産のお茶を生かした香りのいい焼酎づくりが始まった。
商品化にあたっては、焼酎に限らずお酒を愛好する40~50代をメインターゲットに据え、特に女性を意識した。ラベルや箱のデザインも女性に受け入れてもらいやすいように工夫をこらした。
価格は720ミリリットルが1700円(税別)、1800ミリリットルが2900円(同)。全国約20店の酒販店に卸している。注文は電話かファクスのみで受け付け、ネット通販はしていない。直送で対応するが、近くの取扱店を教えることが多い。「どんな飲み方がいいか、お客と相談しながら丁寧に販売してくれる店を選んでいるため」(森社長)という。
本社・蒸留所はJR指宿枕崎線の松ケ浦駅から約2キロ、タクシーで4~5分の場所にある。蒸留所に隣接する事務所内にミニショップと試飲の場を7年前に設け、見学とセットで観光客を受け入れていた。新型コロナウイルス禍で現在は見学を中止しているが再開の道を探る。「消費者と会話しながら味わってもらうことが我々の勉強になる」と森社長は語る。
(鹿児島支局長 笠原昌人)
[日本経済新聞電子版 2021年10月28日付]
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