「はやぶさ」の技術活用で会社設立 狙いは海外市場宇宙航空研究開発機構(JAXA) 元シニアフェロー 川口淳一郎氏(22)

宇宙スタートアップのエールが打ち上げる衛星のエンジン開発に協力した(中央左が川口氏、中央右はエールの岡島礼奈社長)=エール提供

エンジンの故障をはじめ数多くのトラブルに見舞われながら、困難を乗り越えて地球に帰還した小惑星探査機「はやぶさ」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)でプロジェクトマネージャを務めた、元シニアフェローの川口淳一郎氏は、小惑星からサンプルを持ち帰る世界初の試みを成功に導いた。川口氏の「仕事人秘録」の第22回では、スタートアップの立ち上げについて語ります。

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小惑星探査機「はやぶさ」の技術を利用したJAXA発のスタートアップ企業を2016年に設立した。

設立した「パッチドコニックス」は、はやぶさに使った電力ピークカット技術を利用したエネルギーマネジメント技術の提供と、衛星向け推進機関の開発を手掛けています。はやぶさで得た技術を社会に還元・普及するのが狙いです。社名は宇宙飛行の軌道を設計する手法からとりました。

推進システムは、重量が100キログラム以下の小型衛星向けで安くて使いやすいものを目指しています。設立当初は、液体からガスを作る革新的な技術を使ったエンジンの開発を目指していました。エネルギーの利用効率が既存のエンジンの2倍にもなるからです。もとは音速の5倍以上の極超音速で飛ぶ航空機のためのエンジン開発からスタートした技術で、技術者としてはやりがいのある仕事です。

ところがビジネスの人には電気代が半分になるといってもエンジンの価格が高いと魅力がない。一方で2倍くらいの電気代には鷹揚で、既存技術で安いエンジンを作ることにしました。ただ既存技術といっても従来とは異なる、ひと味違うエンジンになったと自負しています。人工流れ星を目指すスタートアップ「エール」の小型衛星に搭載され、これからも協力していきたいと考えています。

全体の使用電力を監視するだけで効率的にエネルギー使用量を抑えられるマネジメント技術は大手のパートナーを通じ製品化しています。鉄道の省電力化や家庭のピーク電力削減などに使われようとしています。

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