
ハイブリッドスーパースポーツ「ホンダNSX」の生産終了に合わせて登場した、高性能バージョン「NSXタイプS」。その洗練された走りは、たゆまぬ開発の到達点として納得できるだけの、完成度の高さをみせてくれた。
見えないところもずいぶん違う
第2世代NSXのファイナルモデルとなるタイプS。日米加で350台の限定数は既に完売……という貴重な一台に触れる機会を得た。場所は北海道の鷹栖プルービンググラウンド。初代NSXの登場と相前後して開設され、1990年代以降、ホンダ車のダイナミクスの礎を築き続けてきた場所だ。
試乗車は取材日のわずか1週間前にオハイオのパフォーマンス・マニュファクチュアリング・センターから届けられた個体で、アキュラ版とホンダ版の2台が用意されていた。カラーはタイプS専用色となる「カーボンマットグレー・メタリック」。この先、品質確認や保持などのためにホンダ社内でのみ使われるもので、当然門外不出であり、シリアルナンバーは000/000となっている。
比較用のベースモデルと並ぶタイプSは、やはりひと目でわかる精悍(せいかん)さを放っていた。塗色の強さや前後バンパー形状などの違いはさておき、専用鍛造ホイールのインセットによって拡幅されたトレッドがたたずまいに効いている。とあらば、ベースモデルと変わらぬ全高もちょっといたずらしたくもなるが、試乗後にはそんな助平心が毛ほども生えなくなるとは思いもよらなかった。
タイプSのパワートレイン&ドライブトレインはベースモデルと同じ、専用設計の75度バンク3.5リッターV6ツインターボにモーターを組み合わせ、前軸側に2つのモーターを配置する「SH-AWD」だ。が、エンジン側はGPF(ガソリン・パティキュレート・フィルター)装着を必須とする欧州仕様の高耐熱型小径タービンをパワーとレスポンスの側に転用し、過給圧のピーク値を5.6%向上、それに合わせて直噴とポート噴射を併用するインジェクターの吐出量をピーク値で25%増強している。さらにインタークーラーはフィンピッチを狭めて高密度化し、冷却性能を15%アップ。これらによってエンジン単体出力をベースモデルより22PS/50N・m向上させている。
モーター側は前軸のツインモーターユニットのギア比を20%ローギアード化し、蹴り出し力を高めたほか、駆動用のバッテリーはSOC(充電状態)の主に上限側で多くとられていたマージンを振り分けて出力を10%、使用容量を20%アップした。これによりモーターの瞬発力を高めるとともに、EV走行領域を拡大している。




