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2016年に南アフリカのスラム街でお菓子を抱えて喜ぶ子どもの姿を見て、ユーハイムの河本英雄社長は「お菓子で世界を平和にしていきたい」との思いを新たにした。それまでは「とにかく勝つことで自分も社員も幸せになれる」と考えていたが、ここに限界があったと振り返る。その後、日本に戻って始めたのは、河本社長とベテラン菓子職人らとの斬新なプロジェクトだった。

――南アフリカで見た光景が転機だったと。

「自分はなぜ、お菓子屋になったのかといえば、それは家業だったからでした。自分なりに菓子作りを学び、経営者としてがむしゃらに突っ走ってきましたが、それだけでは限界があったと気づかされました。同時にお菓子の力を実感しました。私を南アフリカに誘ってくださった一橋大学の米倉誠一郎先生から『ここでバウムクーヘンを売ったらどうか』という宿題をその時にいただきました。遠く離れた国の子どもたちにもできたてを届けられないか。しかし、現地の人たちには『今ある商習慣を壊さないでほしい』と言われました」

「わが社は自社で改良した専用オーブンを使って、職人が焼き色を確認するなど付きっきりでバウムクーヘンを焼き上げます。現地で作って売るのはムリではないかと思いました。ところがある日、小型の機械を作って現地に運び、インターネットでつないで、遠隔でお菓子作りをお手伝いするのはどうかというアイデアが浮かびました。中央工場(愛知県安城市)でベテランの菓子職人らと3人で、AI(人工知能)を使ったバウムクーヘンのオーブンの開発を始めました」

ユーハイム社長 河本英雄氏

ユーハイム社長 河本英雄氏

――菓子作りへのAI導入に反発は。

「ベテラン職人には当初、そんなことは不可能だろうと言われました。それよりも若手職人を1人でも多く育てた方がいいのではないかと。ただ、バウムクーヘンの製造は職人の勘が何度も繰り返されるもので、ある大学の技術屋の先生には『むしろAIに向いている』と言われました。バウムクーヘンは芯棒を回しながら生地をつけ、オーブンに入れて回しながら焼き、職人の勘でタイミング良く取り出し、また生地をつけるというのを20回くらい繰り返して焼き上げるからです」

「センサーで職人技を解析し、AIで再現すると、そのベテラン職人はおいしさがちょっと違うなと。職人の方が自身の癖を修正し、解析させたら、今度はおいしいと驚いていました。生地の配合を調整したら、もっとおいしくなるのではないかとAIに刺激されていました。親方と弟子がやり合っているみたいでした。職人の勘をベースにした会社にもテクノロジーは入っていけると感じました」

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