青梅の小沢酒造「東京蔵人」 江戸期の製法を都内で

小沢酒造には昔ながらの木樽を使って仕込む酒もある(東京都青梅市)

小沢酒造(東京都青梅市)は観光スポット、御岳山の麓の多摩川上流に蔵を構える。「澤乃井」のブランド名で知られる都内有数の酒蔵だ。仕込み水を使い分け、時代に対応した品ぞろえにしてきた。一方、創業した江戸時代からの仕込み方法にもこだわり続けた地酒が「東京蔵人」だ。

同社の酒蔵の一角には、創業の1702年以来仕込み水の水源として使い続けている井戸がある。波紋を広げないと水の存在がわかりにくいぐらいの透明度の井戸水は、奥多摩を代表する山の一つ、高水三山を水源とする中硬水だ。小沢幹夫社長は「ミネラルが豊富で当社の酒造りを支えてきた」と話す。

創業した江戸時代から使っている中硬水の井戸(東京都青梅市)

本社のある多摩川沿いの対岸に同社が所有する山林には、戦後に見つかった、水源が全く異なる別の井戸がある。水質は軟水だ。仕込み水で硬水、軟水双方の水源があると使い分けで造れる酒が多様になる。

硬水は発酵が進みやすく、ワインで言えばフルボディータイプの濃い酒ができる。硬水よりミネラルが少ない軟水は発酵がゆっくり進み、すっきりとした味わいの酒になる。