目標達成後も歩み続ける

1つのゴールを達成して終わりではないことが、カメの成功が持続的である理由だと著者は説く。マリー選手の例で言えば、優勝して世界1位となることが決まった試合後のロッカールームで、もう次のシーズンに向けた戦略をコーチと立てていたそうだ。カメだからゆっくりで楽というわけでは決してなく、マリー選手の中に進み続けることへの強いコミットメントを持つカメの姿を著者は見る。

周囲のことを意に介さず、自己主張や成果のアピールがうまく、パッと結果を出すウサギと異なり、カメにとって重要なのは「謙虚さ」だとの指摘も面白い。

森保監督がW杯行きを決めた試合後のインタビューで、新型コロナウイルス禍の中で奮闘するエッセンシャルワーカーへの感謝を真っ先に示したことは記憶に新しい。周囲の協力なくして成功はないことを理解しているカメだからこそ、謙虚な姿勢を貫くことができ、それが次の成果にもつながるという好循環を起こせるのだろう。

本書には、自分を改善する実践メニューとして、「カメの自己診断テスト」や「カメのブートキャンプ」など具体的に取り組める方法も紹介されている。成果が出ないと焦っている方こそ、あえてスピードを落とし、スローレーンを進んでみてはいかがだろうか。

今回の評者 = 若林 智紀
情報工場エディター。国際機関勤務の後、人材育成をテーマに起業。その後、ホテル運営企業にて本社人事部門と現場マネジャーを歴任。多岐にわたる業界経験を持つ。千葉県出身。東大卒。

SLOW LANE -カメの流儀で人生を勝ち取る方法-

著者 : マット・リトル
出版 : 東洋館出版社
価格 : 2,200 円(税込み)