「持続的」な成功つかむには カメ流キャリアのすすめ『SLOW LANE カメの流儀で人生を勝ち取る方法』

時間をかけて成功を手にした人が、「苦労人」と評されることがよくある。例えば、7大会連続のサッカーワールドカップ(W杯)出場を決めたサッカー日本代表チームを率いた森保一監督だ。最終予選で連敗し、その責を負って解任間際まで追い込まれたが、最後は見事に勝利を飾った。しかし昨今は、苦労するより、てっとり早く成功を手にしたいという風潮が強いような気がする。

本書『SLOW LANE カメの流儀で人生を勝ち取る方法』は、そんな風潮に警鐘を鳴らす一冊だ。イソップ寓話(ぐうわ)「ウサギとカメ」になぞらえ、カメのように時間をかけて着実にキャリアを進める「スローレーン」の重要性を説き、その際に持つべき価値観やキャリア戦略を詳細に指南している。

著者のマット・リトル氏は、テニスの元世界王者アンディ・マリー選手の専属フィジカルトレーナーで、世界的に認められている。

カメが持つべき「忍耐強い切迫感」

著者は、スローレーンこそが成功の道だと力を込める。仕事で成果を出して認められるには、長い時間をかけて習得したスキルと、周囲との信頼関係が必要となるからだという。

そこで、「忍耐強い切迫感」がカメにとって重要だとの著者の指摘が興味深い。矛盾した表現のようだが、要は「必死さを長期間持ち続ける」ということだろう。

著者が長年支えたアンディ・マリー選手は、実は初めて世界ランク2位となってから、悲願の1位になるまでに7年間を要している。これは世界最長だそうだ。さらにこの間、度重なる故障で大手術を経験。それでもマリー選手は、1日でも早く試合に復帰したいという衝動、つまり切迫感を、長いリハビリ期間にも持ち続けていたと著者は述懐する。

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目標達成後も歩み続ける