硬いものを食べると顎が痛い。口を大きく開けられなくなった――。多くの人が経験する顎(がく)関節症の症状だ。自然に軽快することも多いが、重い病気が隠れていることもあるので、辛い症状が2週間以上続いたら歯科医などに相談してほしい。
口を開け閉めする際、顎は耳の下の顎関節がちょうつがいのように働く。顎を動かすのは咬(こう)筋、側頭筋など咀嚼(そしゃく)筋と呼ばれる筋肉だ。関節にはクッションの役割を果たす関節円板が備わる。

咀嚼筋に負担がかかったり、関節円板が前後にずれたりすると関節や筋肉が痛む、口が開けにくい(運動障害)、顎を動かすと音がするという症状が出る。顎関節症はこの症状を総称した病名だ。
東京都内の就労者約千人を対象に行った調査では、男性14.6%、女性21.2%で顎関節症が疑われ、身近な病気でもある。患者は20〜30代に多く、日本大学松戸歯学部の小見山道教授は「成長発達が終わり顎に加わる物理的ストレスの影響が出やすい可能性がある」と解説する。
多くの顎関節症は、いわゆる関節の捻挫や筋肉痛と同じで、自然に治ることも多い。ただ同じような症状が表れる重大な病気の可能性もある。小見山教授は「痛くて食事を取りにくいなど生活への支障が2週間以上続くときは歯科医院で確認してほしい」とアドバイスする。
最近、歯科医院での治療で重視されているのはセルフケアだ。羽毛田歯科医院(長野県南佐久郡)の羽毛田匡院長は「症状によっては安静より我慢できる範囲で口を大きく開ける運動療法を行う方が症状が改善しやすいことが分かってきた」と話す。
口を開け利き手の指を下の前歯の先にかけ、痛みを我慢できる範囲で下に力を加えると効果的。3〜4回行うのが1セットで、1日4セット行う。患者によっては、積極的に咀嚼筋を鍛える訓練を指導される場合もある。羽毛田院長は「痛みを伴うセルフケアなので歯科医の指導を受けて行ってほしい」と話す。