国民信じたゴルバチョフ氏

――ロシアの歴史上の人物で、模範となるリーダーはいますか。

「ゴルバチョフ元ソ連大統領です。彼には国民の良識を信じるオプチミズムがあった。ゴルバチョフはソ連を崩壊させましたが、本当はその役割は他の人に任せて、その後の国づくりのところで登場すべきだった。彼はヨーロッパの家という思想を持っていて、ヨーロッパの中にあるべきロシアを位置づけしようとしていた。そうすれば歴史はいまと違っていたかもしれません」

――大学という組織が目指すべき成功とは何でしょうか。

学長職のかたわら、現在も教壇に立つ

「むろん安定した志願者の獲得です。言い換えれば大学のブランドの確立です。そのためには選び抜かれた授業科目を提供しなければいけません。大切なのは教員一人ひとりの教養力です。文学に接し、音楽をたしなみ、若い人々の関心に注意を向けてどんどん新しい文化を摂取することが必要です」

――後継者の育成にはどのように取り組まれていますか。

「男女を問わず、有言実行できる存在が必要です。人を導く力があると感じた人物を抜てきしています。学問的な能力とは異なる、人を動かす資質を持っている人がいるのです。大学の幹部職は副学長4人、研究科長1人、学部長4人で、以前は幹部職に女性はほとんどいませんでしたが、現在は男性5人、女性4人の構成です」

「私が学長として仕事ができるのも、副学長や学部長の献身的なサポートがあるからです。その人たちが次の世代の大学をつくっていく。教員は百数十人と少ないですから、全員の業績をしっかりと見ています。好き嫌いは評価をゆがめますが、私は人に対する好き嫌いはありません。人を小説の登場人物のように見ていますから、どんなタイプの人もどこかしら愛らしく見えてきます」

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