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ロシア文学者の亀山郁夫さん(73)は名古屋外国語大学学長として、教養教育に力を入れる。ウクライナ戦争をはじめ、国際情勢が混沌とする中、次世代のリーダーが身に付けるべき教養とは何か。

――経営者や組織のリーダーに求められる資質は。

「経営能力や判断力が優れているだけではなく、人を精神的に深くうなずかせることができるかどうか。この人の意見を聞こうと思わせるのは教養です。どれだけ本を読んでいるか。それは文学に限りません。その時代に流行した知的なメインストリームをしっかり追いかける。ここだけはプロとしゃべっても負けないという得意分野をつくる。宇宙や科学の未来でも芸術でもいい。それがないと自信を持って発信できません」

――大学ではどうグローバル人材を育成していますか。

「コロナ禍で外国語大学は大きな打撃を受けています。海外に行くことができないところにウクライナ戦争が加わって、海外で安全が保証されないという感覚がある。受験生のマインドが国際的なものから離れています」

「その中でも留学という制度は非常に重要で、自立を学ぶことができます。留学をすることでびっくりするくらい人は伸びます。若い人の吸収力は素晴らしくて年寄りの10年分を1年間で身に付けてきますね。名古屋外大では留学費用全額支援制度を設けています。世界180の大学と提携しており、今年はコロナで出発を待っていた学生が多く、400人がこの制度を使って留学します」

名古屋外国語大学長 亀山郁夫氏

名古屋外国語大学長 亀山郁夫氏

――現代において外国語を学ぶ意義を教えてください。

「私たちが判断に迷わず、嘘か真実かを見分ける能力を身に付けるためにも、外国語・外国文化の学びは不可欠です。将来的には英語に加えてもう一言語という能力が求められると思います。どれほどの高性能の自動翻訳機も、胸の中の外国語ほどの価値はありません。自動翻訳機では文化を知ることができないからです。文化を知るとは、歴史を知り、歴史の根底に潜むメンタリティーのコアを把握することです。言語を学ぶことなしには絶対に理解できない精神性、異なるメンタリティーというものがあるのです」

「世界は単一的なグローバル化の流れの中で順調に進んでいるように見えるが、それとは関係ない個々のうめきが世界中にあふれていることを知らなければいけません。それを知るのが外国語学です。日本に何十万人という学生がいるなら、何百人かは、一人ひとりがひとつの国の運命を見守っていくことが必要じゃないでしょうか。私がロシアを見守るなら、ある学生はカンボジアかもしれない。それが全部アメリカと英語の勉強で終わってしまうのは悲しむべきことです」

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