米ファスト・カンパニー

「Facebook」が「TikTok」風プラットフォームへと変貌を遂げることは、これまで人々から広く支持を集めていた「ソーシャルネットワーキング」の終わりの始まりを告げているのかもしれない。

従来のソーシャルネットワーキングサービスは、近い将来、その名を墓石に墓碑銘として刻む事態に陥るかもしれない(写真はイメージ、出所/Shutterstock)
従来のソーシャルネットワーキングサービスは、近い将来、その名を墓石に墓碑銘として刻む事態に陥るかもしれない(写真はイメージ、出所/Shutterstock)

 私たちがソーシャルネットワーキングとして知るようになったものが、恐らく廃れようとしている。かつては、ありとあらゆる人を引き寄せる魅力的なサービスで、それと同時に広告のターゲティングに利用できる個人情報を収集する格好の手段でもあった。

 だが、インターネット上では、すべてが一時的だ。「TikTok」は、先行したどんなサービスよりも中毒性が高いアプリを開発した。多くの人にとって、TikTokはスマートフォン上でできる最も楽しいことだ。傘下のアプリが長年アプリストアの人気ランキングを牛耳ってきた米メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)も、それを理解している。このため同社は「Reels」というTikTokもどきの動画投稿機能を開発した。そして2022年7月21日、旗艦アプリの「Facebook」を一種の動画アプリに刷新すると発表した。

ソーシャルネットワーキング時代の終焉(しゅうえん)

 ユーザーが今Facebookを利用しようとしてアプリを開くと、TikTok同様の短尺動画であるReels動画を含む「Home」タブが表示されるようになった(会社側によると、デスクトップ用のアプリも今後刷新される)。高校時代の旧友の最新投稿をチェックしたり、元恋人のページをのぞき見したりしたければ、「Feeds」という別のタブを開かなければならない。従来のソーシャルネットワーキング機能はここに集められている。ある種の副次的な呼び物として、だ(ユーザーはReels動画に「いいね」を付けたり、コメントしたりできるが、人との交流よりも娯楽が主な目的だ)。

 米ニュースサイト「アクシオス」のスコット・ローゼンバーグ編集長(技術担当)は、22年7月25日の投稿で、次のように表現した。

 「この22年7月下旬をソーシャルネットワーキング時代の終焉として記憶にとどめるといい。03年に(元祖SNSの)『Friendster』の台頭とともに始まり、20年間にわたるインターネットの成長を形作り、TikTok風に全面刷新されたFacebookの新アプリ公開をもって幕を下ろす時代のことだ」

 メタの経営陣は今、中核的なSNSを「レガシー」技術と見なしているとローゼンバーグ氏は指摘している。技術の世界では、「レガシー」とは、例えば3G(第3世代)やMP3専用プレーヤーなど、やがて廃れて打ち切られるものを意味する。

 長年にわたり、そうしたソーシャルネットワーキング機能が最大の目玉だった。それが、ユーザーを次々と呼び込み、サイトにとどまるようにする(さらには広告を見て、自分の個人情報のパンくずを残していくようにする)呼び物だった。

「友人と家族」のSNSが誤情報の渦に

 マーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)が率いるメタは、会社の形成期にSNSを広くユーザーに提供した。先行していた「MySpace」をさらに洗練させ、よく整理されたようなバージョンとして、だ。そして何より素晴らしいことに、すべての人がそこにいた! Facebookはユーザーに、友人の休暇や親戚の赤ちゃんの写真を常にチェックしておく方法と、自分の投稿に「いいね」が付き、コメントしてもらうスリルを与えた。友人や家族と結びついていることがすべてだった。

NIKKEI STYLE

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