従業員満足度を高める「両親手当」も

海底撈はなぜ、これほどのサービスを実現できるのか。著者は一つの理由として、各店舗のKPI(重要業績評価指標)に「売上・利益を入れない」点を指摘する。代わりに重視する指標が「顧客満足度」に加えて「従業員満足度」。中国では従業員全員が正社員だ。外食産業で最高水準の給与に加え、職場の徒歩圏に寮を完備しており、まかない食まで提供される。

驚くのは、毎月ふるさとの両親の口座に3,000~6,000円程度が振り込まれる「両親手当」だ。やるといったら徹底的にやるのが海底撈の強みだ。コロナ禍の影響から、21年末には約300店舗の閉鎖を余儀なくされたが、その際も張氏は、「店は閉めるが解雇はしない」と宣言した。

張氏が貫くのは、日本でもよく耳にする顧客と従業員を大切にする経営哲学だ。じつは同氏は、パナソニック創業者の松下幸之助の著書から経営を学んだそうだ。商売やサービスの本質を改めて見つめるために、すべてのビジネスパーソンにお薦めしたい。

今回の評者 = 倉澤 順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働きながら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

海底撈 知られざる中国巨大外食企業の素顔

著者 : 山下純
出版 : 徳間書店
価格 : 1,650 円(税込み)