長引くコロナ禍に加え、世界的な情勢不安が広がる中、2023年に伸びる産業や業界、そしてそれをけん引するスタートアップは何か。今後の注目スタートアップや分野をVC(ベンチャーキャピタル)に問う本連載。第1回は、ZホールディングスのCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)として、グローバルにスタートアップ支援を行う、Z Venture Capital(東京・千代田、以下ZVC)社長の堀新一郎氏に聞いた。

Z Venture Capital社長の堀新一郎氏に聞く 写真提供:Z Venture Capital
Z Venture Capital社長の堀新一郎氏に聞く 写真提供:Z Venture Capital
堀 新一郎 氏
Z Venture Capital社長
フューチャーアーキテクト、ドリームインキュベータを経て、2013年からYJキャピタル(現Z Venture Capital)に参画。同社COO(最高執行責任者)を経て16年11月から社長に就任。LINE Venturesとの統合に伴い、21年4月からZ Venture Capital社長。東南アジアグロースファンド「EV Growth Fund」のパートナー、SBイノベンチャー取締役、Code Republicアドバイザー兼務。著書に『STARTUP 優れた起業家は何を考え、どう行動したか』(共著、NewsPicksパブリッシング)

――まずは22年のスタートアップ企業全体の状況を教えてください。

堀 新一郎氏(以下、堀) 2022年3月、米国がゼロ金利を解除し、それ以降、米国や日本の株式市場が崩れ、スタートアップ業界もその影響を受けました。特に、21年まで続々とIPO(新規上場)で資金調達に成功していた、法人向けシステムを提供するSaaS系企業のバリュエーション(企業価値評価)が非常に厳しくなっています。

 21年は売り上げのARR(Annual Recurring Revenue、年間経常収益)の15~20倍が時価総額(企業価値)といわれ、ARRが6億円であれば、90億~120億円という計算式が成り立っていました。それが、22年には6~10倍に落ちています。つまり、上場してもいい株価が付かない可能性が高くなり、IPOの中止や延期を行う企業が増えています。

――そうした中、ZVCが注力して投資する領域は変化していますか。

 従来通り、コマース(小売り)、メディア、フィンテックの3本柱を主要な領域として投資をしていく方針に加え、注目しているのがWeb3(ウェブスリー)です。22年は、ブロックチェーン(分散型台帳)やスマートコントラクト(ブロックチェーン上で契約を自動的に行う仕組み)、トークンを使った新しいプロジェクトが続々と登場し、力のあるスタートアップ企業も出てきています。

 Web3の中でも広がっていくスピードが速いと想定しているのが、ゲーム領域です。ブロックチェーン技術を使ったゲームで、例えばユーザー同士がゲーム内アイテムを売買し、2次流通市場が広がるような流れが想定されます。

 また、デジタルコンテンツ領域にも注目しています。小説や漫画、アニメ、動画など、いろいろな領域にNFT(非代替性トークン)が組み込まれていく可能性があります。NFTなどを活用すれば、2次流通市場で作品が売買された場合にクリエーターに収益を還元するような仕組みもつくれます。クリエーターがより多くの収入を得られる新しいプラットフォームが広がっていくのではないかと考えています。

ゲーム実況は「ライブゲーム」で新たなステージへ

――このような状況を踏まえ、またアフターコロナを見据えた動きが活発化する中、22年に活躍し、あるいは23年以降に花開きそうなスタートアップ企業は。

NIKKEI STYLE

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