ひらめきブックレビュー

脂質と糖質、どちらが太りやすいか 栄養素と体の関係 『本当に役立つ栄養学 肥満、病気、老化予防のカギとなる食べものの科学』

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「体脂肪を減らす」「睡眠の質を改善する」――。巧みに関心を引く宣伝文句につられて、私は毎日何かしらのトクホ(特定保健用食品)を口にする。栄養についての科学的な原理を理解しないまま、断片的な情報をうのみにしている自覚はある。きちんと理解したいと思いながら、いろいろな化学物質が登場する栄養学の世界を敬遠してきた。

本書『本当に役立つ栄養学 肥満、病気、老化予防のカギとなる食べものの科学』は栄養素の種類別や、血液・筋肉・骨・脳など人体の部位別に内容が整理されており、栄養素と身体の関係について網羅的・体系的に学びやすい。また、一見すると科学的な宣伝文句の誤解についてコメントするなど実用的だ。著者の佐藤成美氏はサイエンスライターであり、明治学院大学などで非常勤講師も務める。

食塩は控えるべきか

例えば、食塩の話題をみてみよう。近年の猛暑の影響で、夏場の熱中症予防に塩分補給を呼びかける報道もなじみ深くなった。一方、食塩といえば元来、高血圧の原因としてやり玉に挙げられることも多い。結局、塩分は控えて良いのか、悪いのか?

国の食事摂取基準は欧米の研究をもとに推定されたもので、日本人の食生活を踏まえた塩分の必要量については、研究者によって見解が異なるという。食塩のようなメジャーなものでも「正解」が定まっていないのは驚きであり、栄養の世界の奥深さも感じる。

驚くのはそれだけではない。人体にはナトリウム(食塩の成分)が不足すると、骨に蓄えたナトリウムを取り出して使う仕組みが備わっている。その際、体内に必要な成分であるカルシウムとマグネシウムも一緒に骨から放出するという。つまり、食塩を控えすぎると、カルシウムやマグネシウムが体から失われてしまう。こうした相互作用を踏まえれば、塩分は控えれば良いというものではない。また、サプリメントで特定のミネラルだけを摂取することも、考え直した方がいいかもしれない。

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