ユニコーンやソロ活動で才能を発揮してきた奥田民生さんは56歳。今回は博報堂生活総合研究所の前沢裕文氏(44歳)が、おじさん歴10年以上の憧れの先輩に教えを請う。すると、40代で再始動したユニコーンでは、おじさんであることが武器になり、そのことで自身も楽になったという。ネガティブなはずの「おじさん」をどう武器にしたのか――。全40代のお手本として必読!

 奥田民生――。もうこれだけでパワーワードです。中高生の頃のバンドブームをきっかけに音楽を聴くようになった40代おじさんたちは、名前から後光が差して見えることでしょう。

 今回は、先日2年ぶり16枚目となるアルバム『ツイス島&シャウ島』をリリースしたロックバンド、ユニコーンの奥田民生さんにお話を伺いました。現在56歳でおじさん歴14年目を迎えている先輩の一言一言は、私たち40代おじさんがおじさんとして生きていくための手引きのようなものになっていると思います。早速ご一読ください。

奥田 民生
1965年広島生まれ。87年にユニコーンでメジャーデビュー。94年にシングル「愛のために」でソロ活動を本格的にスタートさせ、様々なアーティストとのコラボレーションや、プロデューサーとしての才能も遺憾なく発揮。バンドスタイルの「MTR&Y」、弾き語りスタイルの「ひとり股旅」、宅録スタイルのDIYアナログレコーディング「カンタンカンタビレ」など活動形態は様々。テレワークでゲストとつながりトークや演奏を繰り広げる「カンタンテレタビレ」やバーチャル背景で演奏する「カンタンバーチャビレ」などをYouTubeにて次々と公開。その独自の活動でリスナーのみならずミュージシャンからも愛されている。

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奥田民生(RAMEN CURRY MUSIC RECORDS)公式YouTubeチャンネル
奥田民生 OFFICIAL WEBSITE
奥田民生 Official (@OT_staff)
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前沢裕文(以下、前沢) 博報堂生活総研が2020年に行った調査で「43歳からがおじさん」という結果が出ておりまして。奥田さんは1965年5月生まれということで、43歳前後のアルバムリリースを調べると、2008年1月、42歳のときにソロで『Fantastic OT9』、09年2月、43歳のときにユニコーンで『シャンブル』をリリースされています。

奥田民生氏(以下、奥田) ああ、ユニコーン再始動してますね(編集注:ユニコーンは1993年に一度解散し、2009年に再始動した)。

前沢 再始動後初アルバムが、おじさんになった少し後のリリースなんですよ。

奥田 復活したユニコーンは完全に「おじさんバンド」ですからね。まさに年齢的にも合ってるじゃないですか(笑)。

 確かに、再始動がその時期だというなら、そのときは「俺たちはもう全然若くない」というのが染み込んでいるし、「昔みたいにはできないし、やらないからね」みたいな感じですからね。僕らの場合はおじさんになったことを武器にするというか、おじさんはやらないよそんなことはって。

前沢 武器というか、盾というか(笑)。

奥田 そうですね(笑)。「おじさんなんだからそんな仕事のさせ方しないでくれ」と言える。「もうおじさんなんだから」って感じは、すごく楽でした。メンバーの関係も、おじさんになってまで細かいことやいのやいの言わないよもう、という空気もありましたしね。

前沢 ご自身の40代は、振り返ってみるとどんな40代でしたか?

奥田 30代と一緒だと思ってやっていました。40代中盤くらいからは、体力もなくなってきたなとか、四十肩になったし、バンドでもそんな話しかしないし。どこの病院行ってんだとかさ(笑)。

 でも、周りからの見られ方が「おじさん」というのがよかったし、再始動して「おじさんバンド」って堂々と言えることがすごく楽。

前沢 どんどんいいおじさんになっているように見えますけど、奥田さんの中でこんなおじさんでいたいというのはあるんでしょうか?

奥田 ふふっ。どうすかねえ。若い頃から割と老けたがりだったから。20代の頃から、30代後半くらいの人の音楽のつくり方がいい感じだなと思っていたので、早くそうなりたいって、焦ってそっちにいってる感じがあって。がむしゃらじゃなかったり、ちょっと余裕があったり、そういうのに憧れていたんですよね。今も、そんな感じが正しいと思うんですけど。

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