コロナ禍で進行がん増加も 検診控えで早期発見できず

日経プラスワン

がんは日本人の2人に1人以上がかかる身近な病気。早く見つけて治療をすれば治る可能性が高いが、新型コロナウイルス下の検診控えの影響で早期がんの発見が減っている。新型コロナの感染拡大から3年余り。がん検診から遠ざかっている人は早めに受診しよう。

写真はイメージ=PIXTA

がん検診、受けているだろうか。日本対がん協会によると、2020年に自治体が実施したがん検診の受診者はコロナ禍前より約3割減少、21年も1割減だった。

受診者減少の影響を受け、がん診療の現場でも変化が起こっている。国立がん研究センターが全国のがん診療連携拠点病院などの登録データ(21年)を集計した結果、多くのがん種で検診発見例が減少し、検診以外で見つかる例が増加。また早期がんが減っていることも判明した。

国立がん研究センター検診研究部の中山富雄部長は「検診以外で発見されるがんは症状が出てから医療機関を受診して見つかるため、病状が進んでいることが多い。検診控えで早期がんが減る一方で、今後は進行がんが増えてくる可能性もある」と危惧する。

例えば罹患(りかん)数が最も多く、女性では死亡数1位でもある大腸がん。21年の検診発見例はコロナ禍前の3%減で、検診以外での発見例は2%増。発見時のステージ(病期)で見ると、がんが浅い場所にあるステージ0期や1期の早期がんが減っていた。

東邦大学医療センター大森病院消化器内科の松田尚久教授は「検診で見つかる大腸がんの約6割は早期がんだが、血便などの症状があって医療機関で発見される場合は約8割が進行がんという報告もある」と説明する。

がんは初期には症状がほとんどなく、症状が出てくるころには病状が進んでいる。「早期がんを見つけるには、定期的ながん検診が欠かせない」と両氏は口をそろえる。

がんを早期に見つける利点は大きい。第一に早期がんは治る確率が高い。ステージごとの5年生存率は大腸がんの場合、0期だと98%、1期なら95%と100%に近い。ただしステージが進むにつれて生存率は下がり、遠隔転移のある4期になると2割を切る。男性の死亡数1位の肺がんも同様で、0期が96%、1期が84%だが、4期では8%に低下する。他のがんでも同様の傾向がある。