越境を「遠回り」と考えない

本書が多くの類書と異なるのは、長期的視点で書かれている点である。人によっては越境は遠回りで結果が保証されないとして、その効果に疑問を持つかもしれない。だがそんな疑問は本書で紹介されている5人のロールモデルを知れば、解消することだろう。

例えば、その一人である神谷俊氏は、組織や人事、地域開発などのリサーチやコンサルティングを行う会社の経営者だが、金銭的報酬が発生しない契約前の段階からプロジェクトに深くコミットすることも珍しくないという。勉強会に参加した流れでそのまま他の経営者からの相談に応じたり、情報提供をしたりするというのだ。

短期的にはもうけにならないが、自分の世界にいるだけでは出会えない人たちと関わると、新しい視点や刺激をもらえ、自分自身もバージョンアップする。それに、普段から気軽に相談できる人として信頼されれば、将来の契約に結びつきやすくもなる。

越境は、自発的に行わなければ意味がない。自分自身を創造していく習慣を身につけるきっかけとして、本書を活用していただきたい。

今週の評者 = 倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。

みんなのアンラーニング論 組織に縛られずに働く、生きる、学ぶ

著者 : 長岡 健
出版 : 翔泳社
価格 : 1,980 円(税込み)