現実にバーチャルが重なる 予見者が描く未来の世界『5000日後の世界』

インターネットが商用化されてから、SNS(交流サイト)が誕生するまでで約5000日。そこから、SNSが当たり前に使われる今日までにさらに5000日が経過したという。では、次の5000日には何が起きるのか――。それを予言したのが本書『5000日後の世界』(服部桂 訳)だ。

著者のケヴィン・ケリー氏は米国のテック雑誌『WIRED(ワイアード)』の創刊編集長。テクノロジーによる社会変化を予測し、的中させてきたことから「ビジョナリー(予見者)」と称される。本書はそんなケヴィン氏に、ジャーナリストの大野和基氏らが2019年から21年に行ったインタビューの内容をまとめたもので、翻訳と解説はケヴィン氏の訳書を多く手がけている服部氏が担当した。5000日、つまり約13年後に到来する未来予想図とともに、変化する時代を見通す思考法も示している。

現実とバーチャルの融合

現実の上にバーチャル(仮想)が覆いかぶさる「ミラーワールド」。これが5000日後の世界だ。それはすべてがデジタル化し、AI(人工知能)と接続され、現実とバーチャルが融合したAR(拡張現実)の世界だという。

例えばこんなことができるようになる。AR機能のついた眼鏡型のスマートグラスをつけて古い家の前に立つと、かつての様子が仮想的に重なって見える。部屋にいながらバーチャルな友人や同僚を映し出して会話できる。テレプレゼンス状態(遠隔地にいてもその場で対面しているような状態)で、世界中の、百万人単位の人々が、1つのプロジェクトで協働することも可能になる。

ミラーワールドの画期性は「世界が機械によって認識可能になる」ことだという。AIが物理的な物の位置関係を認識し、情報の持つ意味(関係性)までを処理する。すると興味を持ったものを見るだけでそれが人間を認識し、情報をくれる。こうした空間を「セマンティックウェブ」と呼ぶこと、ミラーワールドがインターネット、ソーシャルメディアに次ぐ第3のプラットフォームと位置付けられることなどを、著者はかみ砕きながら論じていく。

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