ひらめきブックレビュー

ネットの力で独裁国家に戦いを挑むアマチュア探偵団 『ベリングキャット デジタルハンター、国家の嘘を暴く』

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知らない誰かのスマートフォンで撮影された映像をSNS(交流サイト)やユーチューブで見る体験はいまや日常だ。戦場の映像も例外ではなく、2022年2月以来のロシアによるウクライナ侵攻において個人が撮影した映像をニュースで見かけることも多い。

こうした傾向のさきがけとなったのが、「アラブの春」と呼ばれた11年の中東の民主化運動だ。この時、反体制派のツイートなどを趣味で分析しはじめた会社員がいた。イングランド中部のオフィスで、ユーチューブの動画に映り込んだ背景とグーグルマップを突き合わせ、反体制派の制圧地区を特定したその人物こそ、本書『ベリングキャット デジタルハンター、国家の嘘を暴く(安原和見訳)の著者エリオット・ヒギンズ氏だ。

以来10年、彼はその活動を拡大してきた。チーム名の「ベリングキャット」には、「猫に鈴をつける」役割を買って出る心意気が込められている。掲げるのは「ふつうの人のための情報機関」だ。世界各所のメンバーと協働し、誰でもアクセスできるオープンソースの情報をもとに数々のリポートをネット上で発表してきた。シリアの戦争犯罪、ロシア政府の暗殺活動など多くの事件で専門家よりも早く真実を突き止め、情報操作をもくろむ独裁国家にとって目の上のたんこぶのような存在となった。本書ではその思想と調査手法がつまびらかにされている。

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