2022年11月に、アサヒ飲料が期間限定で発売した「アサヒ おいしい水 天然水 白湯」が、想定以上の売り上げを見せている。同社推計によると、白湯の飲用経験率は年々増加傾向で、09年の11.8%から22年には61.0%と約5倍に伸びている。一般的には天然水を温めただけの商品だが、白湯の認知度アップと男性の飲用率向上という2つの変化をうまく捉え、支持を集めている。

「アサヒ おいしい水 天然水 白湯」。パッケージの中央には大きく白湯の文字が描かれる
「アサヒ おいしい水 天然水 白湯」。パッケージの中央には大きく白湯の文字が描かれている(写真提供/アサヒ飲料)

 アサヒ飲料は2022年11月1日、コンビニエンスストアやスーパーマーケットで「アサヒ おいしい水 天然水 白湯」(税込み113円)を期間限定で販売開始した。同社の「アサヒ おいしい水」ブランドの「おいしい水 天然水」を、白湯の適温とされる約50~60度に温めて提供する。

 容量はホット用の什器(じゅうき)では定番の500ミリリットルボトルより一回り小さい340ミリリットルを採用し、温かい間に飲みきれるサイズにした。パッケージ中央には、什器の中でも一目で見分けがつくよう、大きく「白湯」という文字を印字。ホット什器が置かれる冬場限定の商品とした。発売から約1カ月の販売状況は、当初の計画の3倍以上と、かなり好調に推移しているという。

 そもそも白湯とは、水を一度沸騰させたお湯のこと。白湯を飲むことで胃腸全体が温まり、消化を助けたり基礎代謝が上がったりと、健康に良いとされる効果が期待できるといわれる。もともと、美容や健康意識の高まりから白湯を飲む人は増加していた。それが新型コロナウイルス禍を経て、その意識に拍車がかかった。同社の推計では、白湯の飲用経験率は09年の11.8%から22年には61.0%と約5倍に伸長しているという。

 湯を沸かす必要がある白湯が、外出先で飲める。そんな市場に目を付けたのがアサヒ飲料だった。「人々の外出傾向が高まり、出社頻度も上昇してきていることから、22年の頭から企画をスタートした」と、マーケティング本部マーケティング二部 お茶・水グループの鈴木慈氏は明かす。

白湯を企画した、アサヒ飲料 マーケティング本部 マーケティング二部 お茶・水グループの鈴木慈氏
白湯を企画した、アサヒ飲料 マーケティング本部マーケティング二部 お茶・水グループの鈴木慈氏

 主に狙ったのが、朝方や出勤時のシーンだ。朝起きがけに白湯を飲む習慣が定着する一方、朝の支度に時間が取られ、お湯を沸かす時間は意外と取りにくい。こうした利用シーンを想定して、コンビニやスーパーに立ち寄って白湯を買えるようにすれば、アサヒ飲料は既存のミネラルウオーターや清涼飲料とは異なるニーズを掘り起こせる。小売店にとっても目的買いを促す商品になり得るため推しやすく、メーカーと小売店の思惑が一致した商品といえる。

 また、白湯は女性に人気の飲み物というイメージがあるが、実は男性も多く飲んでいる。マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが22年に全国の20~69歳の男女を対象に実施した調査「白湯に関する調査(2022年)」によると、「白湯を飲むことがある」と回答した人は全体で60.9%。女性の67.5%に対し、男性も54.4%と半数以上が飲用していた。鈴木氏は「男性の支持率も高いことから市場のパイが大きいと判断した」。

 白湯というワードが一般にもよく知られるようになり、男性も市場に入ってきたことで、商品化への道も開けたというわけだ。

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