管理職に後ろ向きな人へ リモート時代の「課長2.0」『課長2.0』

課長になりたくない――。そう思う人は多いと聞く。この傾向はリモートワークでメンバーの顔が見えなくなった昨今、さらに強まっているのではないか。

そんな悩める課長候補をはじめ、現役課長や管理職の背中を押してくれるのが本書『課長2.0』だ。リモート環境でもメンバーの能力を引き出し「自走」させ、自らは自由に社内外を動いて人材価値を高めるのが課長の仕事だと説き、そうした働き方を新時代に対応した「課長2.0」と位置付ける。そして、その実践のための具体的なマネジメント術をまとめている。

著者の前田鎌利氏はソフトバンクのモバイル通信事業に従事し、複数のセクションでマネジャーを経験。ソフトバンク子会社の社外取締役などを経て、2013年に独立した。ソフトバンク時代に培ったプレゼンテーションの巧みさに定評があり、自らプレゼンテーションクリエーターという肩書で、プレゼンの講座・研修・講演の講師を務めている。

部下の心つかむ「信頼関係」

リモートでは、これまでのマネジメントを変えざるを得ない。そこで著者は、管理の定義から見直す。管理とは統制ではなく「チームが良い状態を保つようにする」こと。「良い状態」とはメンバーが高いモチベーションを保ち、組織の目標に向かうことだ。要するに、放っておいても自走する状態と定義する。

そんなチームをつくり出すために、「課長」が意識すべきこととして強調されるのがメンバーとの信頼関係である。信頼関係があってこそメンバーの個性が生き、互いに助け合って成果を出すチームとなるからだ。本書ではメンバーとの心の距離を縮めるノウハウが数多く紹介されている。

例えば、リモート環境下で再び注目されている「1on1」ミーティング。仕事上の困りごとや悩みを共有できる貴重な機会だが、部下はなかなか本音を語ってくれないものだ。そんなとき、著者はちょっとした工夫をする。「仕事、うまくいってる?」ではなく「楽しい?」と聞くのだ。前者だと「進捗確認」のようなプレッシャーを与えるが、後者だと答えやすい。そして、表情から本音を探るという。もし顔が曇っていたら「こんなことに困っていない?」と問いかけ、部下の本心に触れるのだ。

きめ細やかな1on1で部下の適性を見いだし、自信を持たせるのも課長の仕事。著者は「人の上に立つのが苦手」と話す女性社員を、周囲に気配りができると見込んでプロジェクトリーダーに抜てきした。彼女は楽しんで仕事に取り組み、管理職候補としての自覚が生まれたという。

次のページ
チームを自走させ自身も価値向上