栽培も醸造も完全有機のワイン 埼玉・武蔵ワイナリー

2021/11/28
武蔵ワイナリーは無農薬生産のブドウを自社で醸造・直販する。(埼玉県小川町)

埼玉県の中央部に位置する小川町は豊かな自然環境を生かした和紙や日本酒造りで知られる。さらに「有機農業の町」でもある。武蔵ワイナリーはこの町でブドウ栽培から醸造まで「完全有機」の自然派ワインを生産する、全国でも稀有(けう)な醸造所だ。

東京・池袋駅から電車で約1時間。東武東上線とJR八高線が交わる小川町駅から北に3キロほどの里山に、武蔵ワイナリーの販売所や醸造所の建物がある。すぐ横には耕作放棄地を活用した約3万平方メートルのブドウ畑があり、周囲には森林や池などが広がる。ワイナリーの代表・醸造責任者の福島有造さんは「都心からも比較的近く、自然もある。ワインを造るには適した場所だ」と話す。

福島さんは北海道大学工学部を卒業後、銀行勤務を経て不動産事業に関する会社を経営していたが、自然と共生する有機農業に可能性を感じた。

ワイン用ブドウの手入れをする武蔵ワイナリー代表の福島有造さん(埼玉県小川町)

2010年から小川町で有機農法を学び始め、11年から無農薬のブドウ生産に参入。同町は1970年代から有機農法を実践する金子美登さんらが「小川町有機農業生産グループ」をつくるなど有機農法が盛んで、福島さんもその一員となった。

ブドウの有機栽培は日本のような高温多湿の環境には適さず、当初はすぐにブドウが病気になるなど苦難の連続だった。それでも、湿気や雨からブドウを守るために特製の雨よけをつけ、害虫はこまめに駆除するなど工夫を重ねた結果、質の高いブドウが収穫できるようになった。