ひらめきブックレビュー

5000回以上の失敗「楽しむ」 ダイソン創業者の挑戦 『インベンション 僕は未来を創意する』

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

「ダイソン」という名前から何を連想するだろうか? 大多数の人は「掃除機」と答えるだろう。登場時に誰もが驚いた「羽のない扇風機」を思い起こす人もいるかもしれない。いずれも普通の家電ではない。ダイソンという英国発の企業を有名にした世界初のサイクロン式掃除機は値段こそ少々高いが、パワフルな吸引力で紙パックいらずという革新的な製品だった。

ダイソンと日本の関係は深い。創業者ジェームズ・ダイソン氏がダイソンを立ち上げる前にサイクロン式掃除機を発明し、ライセンス供与したのがエイペックスという日本企業だった。「G-Force(ジーフォース)」という商品名で1986年に発売された掃除機は人気商品となったという。

ダイソン氏は学生時代から、「ホンダ50」という日本では「スーパーカブ」と呼ばれたホンダのバイクを乗り回しており、本田宗一郎らのものづくりをリスペクトしていた。ソニーのウォークマン開発からもイノベーションのヒントを得ていたようだ。

そんな興味深いエピソードを満載し、ダイソン氏によるデザインとエンジニアリングが融合した、ものづくりの神髄を伝えるのが本書『インベンション 僕は未来を創意する』(川上純子訳)だ。ダイソン氏自らがその生い立ちから、ダイソンで成功した現在までをつづっている。

運命変えた「サイクロン式」

ダイソン氏の真摯で前向きなものづくりへの姿勢を如実に表すのが、最初のサイクロン式掃除機が完成するまでのエピソードだ。英ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)を卒業後に起業し、まずは庭仕事や建設現場で使う手押し車の改良にとりかかった。その過程で出会った、粉末塗料の目詰まりを防ぐ「サイクロン式分離機」が同氏の運命を変えることになる。

分離機のサイクロンを小型化し、掃除機に応用するアイデアを得たダイソン氏は、プロトタイプ(試作品)づくりに没頭する。4年ほどの時間をかけて、特許取得が可能なモデルに到達するまでに同氏が作ったプロトタイプは5127個だ。なんと5126個もの失敗作を経て、ようやく完成に漕ぎつけたのだ。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。