
Google搭載の新インフォテインメントシステムを採用した「ボルボXC60」が上陸。スマホと連動する従来のAndroid Autoとは、いったいどこが違うのか。IoT(Internet of Things)がクルマにもたらす可能性についても、思いを巡らせてみた。
Googleアプリに移動機能が付いた?
ボルボXC60のマイナーチェンジの最注目ポイントがおもしろい。足まわりの変更でもなければパワートレインの刷新でもなく、情報と娯楽をつかさどるインフォテインメントシステムが、Googleの車載OSに変わったというのが最大のトピックなのだ。
「あれ、それって前からじゃん」と、筆者が勘違いしたのは、スマートフォンとクルマを連携させるAndroid Auto。そうじゃなくて、スマホがあろうがなかろうが、ボルボXC60のインフォテインメントシステムそれ自体が、Google Apps and Services(Googleアプリ/サービス)に変更されたのだ。
これでなにがどう変わるかというと、ひとことで言えば「OK、グーグル」と話しかけることで、カーナビ(もちろんGoogleマップ)の目的地設定から、YouTube MusicやSpotify(スポティファイ)での聴きたい音楽のセレクト、エアコンの温度設定やメッセージの送受信まで、音声操作できるようになる。
ボルボ・カー・ジャパン広報部によれば、「Googleアプリに移動機能が付いたようだ、と表現なさったジャーナリストの方もいらっしゃいます」とのことで、同業者ながらうまいことを言うもんだと感心する。ちなみに、ボルボXC60のほか、「V90」「V90クロスカントリー」「S90」が2022年モデルよりGoogleアプリ/サービスを搭載するという。
試乗インプレッションが「走る」「曲がる」「止まる」の評価ではなく、OSの使用インプレッションになるとはおもしろい時代になったものだと、しみじみしながら「XC60 B5 AWDインスクリプション」の運転席に乗り込む。
もうひとつおもしろいことがあって、それは音声認識システムGoogle Assistant(Googleアシスタント)はまだ日本語に対応しておらず、英語しか受け付けてくれないのだ。2022年の第1四半期に日本語に対応する予定だというけれど、ひと昔前の自動車メーカーだったらこの状態で日本に導入するなんて考えられなかったはずだ。
参考までに、Apple CarPlayに対応するのも2022年の第1四半期とのことで、人によっては拙速と呼ぶかもしれないこのスピード感が、クルマ離れしているというか、いまという時代の商品らしいというか、ボルボのゴン攻めの姿勢を表現しているというか、とにかく興味深い。





車両の評価ポイントが変わる?
運転席に座って、Googleアプリ/サービスを起動する。前述したように日本語対応はしていないから、筆者の拙い英語で目的地を設定する。「Destination」と発音したつもりがわかってもらえなくて一瞬焦ったけれど、二度目は無事に理解してくれて、ホッとする。Googleアシスタントの日本語対応が完了すれば、目的地を設定したときにGoogleマップに載っている情報、たとえば定休日や営業時間なども案内してくれるようになるという。
アーロ・パークスという女性ミュージシャンの音楽を聴こうと思って、Googleに「Arlo Parks」をリクエストしてみる。けれども何回試しても「Auto Park」と表示され、フェニックスのスタバで3分くらい全然オーダーが通らず、親切な女性店員にメニューを指さし確認してもらってアイスのスターバックスラテを注文した恥ずかしい記憶がよみがえる。ハードルを下げて、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』をリクエストすると、YouTube Musicが立ち上がり、聞き慣れたイントロが聴こえてきた。
Bowers & Wilkinsのプレミアムサウンドオーディオシステムは電動パノラマガラスサンルーフとセットで42万円ナリのオプションで、さすが値段相応というか、すばらしく音がいい。『ホテル・カリフォルニア』が終わると、勝手にドゥービー・ブラザースの『リッスン・トゥ・ザ・ミュージック』がかかって、どうやらグーグル先生に“ドライバーはウエストコーストサウンドが好きな人”と認識されたようだ。
こうした機能を使って運転しながら思うのは、日常生活でごく当たり前になったスマホやインターネットとの暮らしが、車内でも地続きになったということだ。
ボルボ・カー・ジャパン広報部によれば、これからIoT(Internet of Things)に対応したプロダクトが増えると、帰宅途中にボルボを運転しながら、「OK、グーグル、お風呂を沸かしておいて」という暮らしがごく普通になるという。するとこうした試乗においても、パワートレインの滑らかさやハンドリングの評価だけではなく、いかにストレスなく風呂を沸かせるかに注目するようになるかもしれない。




