
プラグインハイブリッドの魅力を広く知らしめた「三菱アウトランダーPHEV」が、いよいよフルモデルチェンジ。あまたの新機軸が取り入れられた新型は、どのようなクルマに仕上がっているのか? クローズドコースで体感したプロトタイプの走りを報告する。
衝撃的だった初代のデビュー
初めてアウトランダーのPHEVモデルを走らせたとき、素直に未来へのときめきのような楽しさを感じたことを、今でも覚えている。当時はまだ電気自動車(EV)シフトや環境に対する世間の意識も今ほど強くなく、筆者自身、例えば「プリウスPHV」が57km/リッター走るなどと言われても、充電できるハイブリッド車にそれほどピンときてはいなかった。賃貸住まいでは充電器など置けないし、普通の「プリウス」がレギュラーガソリンで38km/リッターも走るのだから十分ではないかと思っていたのだ。
そんななか、突如現れた初代アウトランダーPHEVは、まるで宇宙船のように走って筆者をわくわくさせた。宇宙船が走るとはわれながら滑稽な表現だが、とにもかくにもその巨体が滑らかに走りだし、アクセルを踏み込めばロケットのように加速するモーターライドに驚いた。燃費ばかりではない、乗り物としての魅力をハイブリッド車に感じたのだ。見た目は超コンサバ。内装はかなりプラスチッキーで、色使いも地味。しかし、そんな武骨ささえもがハイテクな戦車のようで、三菱というメーカーの血統と技術が、初めてシンクロしたように思えたのである。
早いもので、そんなアウトランダーPHEVのデビューからおよそ9年の歳月が過ぎ、世のなかは大きく変わった。PHEVが当たり前になったどころか、ハイブリッド車の開発で後れをとった欧州勢は一気にEVへのシフトを強行してエコを叫び、なんでもかんでもモーターで動かしてデジタル技術で表現する世界へ突入した。
こうした状況下で、アウトランダーのPHEVモデルは2世代目、アウトランダーシリーズ自体も(日本仕様が「エアトレック」と呼ばれていた時代を含めて)4世代目に移行することとなったわけだが、果たして新型はどれほどの進化を遂げたのだろうか? あの驚きを超えるようなワクワク感を、再び筆者に与えてくれるのだろうか?




新しくなったシャシーとパワートレイン
試乗会の実施日が正式発表の前ということもあり、今回はクローズドコースである「袖ケ浦フォレストレースウェイ」がその舞台となった。早速、走らせた印象を熱く語りたいところだが、その前に、まずは押さえておくべき概要を説明しよう。
新型アウトランダーは、車両の骨格にルノー・日産・三菱のアライアンスで開発した新しいプラットフォームを使うことが、ひとつ目の大きなトピックである。プラットフォームの開発リーダーは日産で、すでに彼らは新型「ローグ」を発売。その後も新型「エクストレイル」や「キャシュカイ」「ルノー・カジャー」が登場する運びとなっている。クルマの基礎を共用するこれらのモデルに対し、三菱の開発陣は、「S-AWC」の走りで差をつけたいとコメントしていた。
また、ボディーサイズも全長×全幅×全高=4710(+15)×1860(+60)×1745(+35)mm、ホイールベース=2705(+35)mmと、これまでよりひとまわり拡大。車両重量はグレードの違いによって2010~2110kgとなっている。
前軸用と後軸用に2つの駆動モーターを搭載するツインモーター4WDのプラグインハイブリッドシステムは、フロントのモーター出力が60kWから70kWへ、リアのそれが70kWから100kWへと向上。バッテリーの総電力量も13.8kWhから20kWhへと増え、WLTCモードにおけるEV走行可能距離は、従来の57kmから87kmへと大きく延びた(「M」グレード、その他のグレードは83km)。一方で、車両重量の増加もあってか燃費性能は「M」グレードで16.6km/リッター、その他のグレードで16.2km/リッターと、数値上の大きな進化は見られない。ただしガソリンタンクの容量は45リッターから65リッターへと増やされており、トータルでの行動範囲は大きく広がっていることだろう。
多くの時間をシリーズハイブリッドの発電機として機能するエンジンには、初代の後期モデルと同じくMIVEC(可変バルブ機構)付きの2.4リッター直列4気筒を採用。高膨張比サイクル化によって低回転領域での、EGRクーラーやエキマニ一体型シリンダーヘッドの採用によって高回転領域での燃費改善を図りながら、最高出力も128PSから133PSへと向上させている。




