洋菓子職人の技守るために 理念共有し社外も巻き込むユーハイム 河本英雄社長(上)

老舗洋菓子メーカーのユーハイム(神戸市)は創業者のドイツ人、カール・ユーハイムが横浜市に日本1号店を開業して2022年春で100年を迎える。バウムクーヘンに代表されるドイツ菓子の素朴なおいしさは素材の味と職人の技に裏付けられたもので、河本英雄社長(52)は食品添加物に頼らない「純正自然」をかかげる。職人技を中心に据える社是だが、社長就任前に実は一度、撤回を余儀なくされていたものだった。

――節目の年に向けて商品を見直したとか。

「1800年代前半にバウムクーヘンのレシピができたと言われています。見た目は変わらないのに長く愛されているのは、おいしくなり続けているからです。そこには職人の技があります。『焼き』でいかにおいしくしていくか。ケーキのスポンジと同じ材料なのに、全く違うものができあがる。自分たちの時代の自分たちのお菓子とは何かをテーマに、すべてのお菓子と向き合っています」

「ドイツの菓子組合では生地を混ぜる工程で、乳化剤を使ってはならないという規則があります。添加物を使うと均質な生地になり、均質な商品になってしまう。それでは職人の腕が落ちてしまうと。バウムクーヘンはドイツ菓子のシンボルと言えます。添加物を使わないことは職人の技術を守るためにも大切なことだと考えています」

ユーハイム社長 河本英雄氏

――2020年に「純正自然」の社是をかかげました。

「祖父である先々代が1969年に宣言したものだったのですが、私が入社後の2002年ごろ、ある百貨店の方から『ユーハイムはひとつも添加物を使っていないのか』と言われたことがきっかけで一度は取り下げたものです。社内調査の結果、他社よりかなり少ないものの、少なからず使っていたことが分かり、このままではムリだとパンフレットからも消しました」

「会社が大きくなるにつれ、品質の安定した商品を大量に作る必要がそれまではありました。そこから添加物をひとつ抜いては、職人の技をひとつ取り戻す取り組みを始めました。添加物を抜けば、一度に大量に作れず手間はかかりますが、味は良くなっていきました。15年に社長になり、父である先代に何をやるかを問われて、『純正自然の復活です』と答えました」

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