読書はエンターテインメントと割り切っている。

気象庁に入ってしばらくは、毎日1時間以上かけて通勤していた。インフルエンザで寝込んだときに妻が買ってくれた赤川次郎の小説を読んでから、現代作家のエンターテインメントに引き込まれ、通勤時間や昼休みに文庫本を読むようになった。

北方謙三のハードボイルドのビート、スピード感はたまらない。つくば市に住んでいた気象研究所時代には小説の主人公をまね、たき火をしながら考え事をしたものだ。今も七輪の前で時を過ごすことがある。

NHKの大河ドラマ「新選組!」に刺激されて読んだのが司馬遼太郎の『燃えよ剣』だ。海洋研究開発機構のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」のプロジェクトに没頭していた時で、リーダーの住明正先生(現・東京大特任教授)を近藤勇に、2番手でにらみを利かす私を土方歳三に勝手に当てはめて悦に入っていた。新選組関連では浅田次郎の『壬生義士伝』も傑作だ。

歴史物語は話の真実性よりも面白さが大切だ。研究も似たところがある。自分の論文を読んで「面白い」「検証してみよう」と思ってくれる人がいないと前へ進めない。大変でも面白くて研究するうちに、半歩でも真実に近づく。その繰り返しではないか。

(聞き手は編集委員 安藤淳)

[日本経済新聞朝刊2021年10月16日付]

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