2022/3/27

名称は20年、公募で決まった。町民は避難で離散したが、どこにいても故郷を忘れない――。作者はそんな思いを込めた。同県いわき市に避難する根本会長は「帰りたくても帰れない。でもふるさとを忘れない。私の思いと全く同じ」と話す。

22年産帰忘郷の味わいはどうか。会津若松市観光大使で利き酒師の資格を持つ氏家エイミーさんによると、果実のような香りをそなえ、爽やかなお酒に仕上がった。「ずばっと切れる」後口も特徴で、濃い味付けの料理にも合うという。

すっきりした後口が特徴という帰忘郷

今回はクラウドファンディング(CF)を活用。日本酒を企画する、おおくままちづくり公社には当初、「大熊産米で造る日本酒は受け入れられるのか」と、風評への不安もあったが、455人から815万円を集めた。開始3週間で目標の500万円に届き、上限を引き上げた。

22年は21年の1.8倍の4合瓶(720ミリリットル入り)約2100本を製造。約500本をCF支援者に贈り、残りを一般販売する。震災から11年となる11日から、町内のコンビニや宿泊温浴施設などで扱っている。

酒米の作付けは今年、3年目を迎える。「土づくりには本来5~6年はかかる」と根本会長。だから、米作りには伸びしろもある。帰忘郷を毎年味わえば、町の復興の歩みを舌で確かめることができる。

(福島支局長 黒滝啓介)

[日本経済新聞電子版 2022年3月17日付]