ライバル意識束ねる

――組織内における構成員のライバル意識をリーダーはどう生かすべきでしょうか。

「組織内のライバル意識は必然的に存在します。私自身にも他の教員に対する嫉妬の感情はありましたが、学長になるとライバル意識はなくなりました。大学の教員は全員が個人事業主といってよい側面があり、企業内での競争とは異なる部分があると思います。ライバル意識は先天的に備わったものですし、人間の闘争心そのものですから、これを否定したら何も残りません。そのライバル意識をひとつに束ねていくのがリーダーの実力で、そのためには個別の対話が欠かせません」

――ロシアのウクライナ侵攻について、ロシア文学者としてどう感じていますか。

「2014年にウクライナ東部で起きたマレーシア航空機撃墜事件のニュースを聞いたときに『ロシア文学者をやめたい』と思いました。親ロ派勢力によって引き起こされた誤射、撃墜であることは疑うべくもありません。ロシア側の欺瞞(ぎまん)を感じ、嘘にこれ以上加担したくないと思ったのです。ロシア文学、特にドストエフスキーが私に教えてくれた究極の精神は正直であれ、ということです」

「現在の国際情勢において文学者がすべきことは、徹底して弱者の立場に身を置き生命の尊さについて語り続けることです。ウクライナ侵攻とそれに付随する暴力性を明らかにし、勇気を持って発信することが大切だと思います」

(安西明秀)

■冒頭二度読み長編読破
かめやま・いくお 1949年栃木県生まれ。72年東京外国語大学ロシア語学科卒、77年東大院人文科学研究科博士課程単位取得退学。同志社大学助教授などを経て93年東京外大教授。2007年学長。13年から名古屋外国語大学学長。国際ドストエフスキー協会の理事も務める。ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」の新訳は累計120万部を超えた。近著に「人生百年の教養」。難解な長編小説を読み通すコツは最初の30ページを2度読み直し、小説の構成を頭にたたき込むことだという。
■お薦めの本
「モナドの領域」(筒井康隆著)
 著者が自分の最高傑作と言っている小説です。老教授のおいらくの恋がほのかに描かれている。人生を達観した人がいかに美しいか。老人に勇気を与えてくれる本です。

[日本経済新聞夕刊 2022年6月16日付]

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