
「規則正しい生活と栄養バランスの取れた食事。これが何よりの冬季うつ対策」と話す勝院長。食事ではセロトニンの合成に必要な必須アミノ酸「トリプトファン」が多く含まれている乳製品や大豆製品などを多く摂取することを勧める。セロトニン合成には魚に多く含まれるビタミンDも重要で、こちらは日光を浴びることで体内で合成できる。
寒い冬に「朝の散歩」を行おうと思っても、なかなか実行に移せない人は多い。健康行動全般に関わる心理・行動科学的研究に取り組む早稲田大学人間科学学術院の竹中晃二教授は、「散歩ならば履きやすい新しい靴を買って、まず玄関から出てみることから始める。また、家族や友人に応援してもらい、一緒に散歩すると続けやすくなる」とアドバイスする。
また、冬季うつ対策として「冬ならではのライフスタイルを楽しもうとする『ポジティブ・メンタルヘルス』の強化」を勧める。ただ対策しろと言われても人はすぐに行動できない。イベントや温泉旅行、ウインタースポーツなど冬ならではの楽しみを持つことで、寒い冬のネガティブなイメージを払拭できる。
勝院長もこうした認知行動療法的なアプローチを冬季うつの患者に対して行っているという。春になればほとんどが回復する「冬季うつ」だが、ポジティブな気持ちで冬を迎えるようになれば症状の軽減や予防が期待できる。もちろん、うつ症状で仕事や生活に支障が出る場合は躊躇(ちゅうちょ)なく専門医に相談しよう。
(ライター 大谷 新)
[NIKKEI プラス1 2023年1月14日付]