これって冬季うつ? 防ぐ方法は「日光浴・食事・遊び」

日経プラスワン

寒い季節になると何事もおっくうになり、やる気がしない――。多くの人はこうした傾向があるものだが、仕事や生活にまで影響が及ぶ場合は要注意。もしかしたら「冬季うつ」かもしれない。これは単なる「気分」ではなく、治療が必要なれっきとした「心身の不調」だ。

近年、季節の変化に起因する「季節性感情障害」の一種と見なされるようになった冬季うつ。一般的には秋から冬にかけて症状が現れ、春になって暖かくなると回復するというサイクルを毎年繰り返す。

写真はイメージ=PIXTA

では通常のうつ病とは何が違うのか。人形町メンタルクリニック(東京・中央)の勝久寿院長によると、「自然な季節変化のみに影響されていることが最大のポイント。年末年始の多忙さなどに伴う心理的ストレスによるうつ症状は冬季うつではない」。主な原因は日照量不足による、精神を安定させる脳内神経伝達物質セロトニンの分泌量の低下と、体内時計の乱れだと考えられている。

症状の出方も冬季うつは独特だ。まず気分の落ち込みより意欲の低下が目立つ。食欲はむしろ亢進(こうしん)し、パンや麺類など炭水化物を無性に欲するようになる。また、うつ病では不眠が見られるが、冬季うつではむしろ過眠傾向となり、夜間十分に寝ていても日中に眠気を催してしまう。

冬季うつには幸い自分でできる対策や予防があり、軽度であれば回復が期待できる。勝院長が勧めるのは「朝の散歩」だ。日光を浴びることでセロトニンの合成が促進される。歩行など運動をすることで体内時計の正常化も期待できる。

「セロトニンの合成には目から光を取り込む必要がある。散歩中はできるだけ下を向かずに顔を上げておくことが大切。30~60分程度のウオーキングを日々の習慣にすれば効果が見込める」(勝院長)

一部の心療内科・精神科などでは、特殊なライトを使用して太陽光に近い光を目から取り込ませる高照度光療法という選択肢もあるが、健康保険の適用外となる。強いうつ症状が続き、高照度光療法などの効果がない場合は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ剤が処方され、春になったら処方の中止や減薬を行う。