1年半余りで100超の店舗をオープンする勢いのあったワタミ運営の唐揚げ専門店「から揚げの天才」が、一転して閉店ラッシュに見舞われ、歯止めがかかっていない。これまで120超オープンした店舗のうち60超の店舗が閉店と、半減した。唐揚げ専門店は4年で3倍、10年で10倍と過当競争になっている。閉店店舗の跡地には、吉野家やコメダ珈琲店のテークアウト業態が出店している。

「から揚げの天才」の閉店が止まらない
「から揚げの天才」の閉店が止まらない(写真は2023年1月15日に閉店する西浅草店、筆者撮影)

 振り袖姿の成人式参加グループが各地で見られた2023年1月9日の昼すぎ、浅草六区エリア周辺を歩いていた記者の目にふと留まったのが、黄色い車体のキッチンカー(写真上)。車体の脇には、テレビプロデューサーのテリー伊藤氏をかたどったキャラクター像が置かれていた。揚げたての唐揚げとテリー伊藤氏監修の卵焼きを売りにした唐揚げ専門店「から揚げの天才」の西浅草店である。

 定番の「デカから」を2個注文しようとカウンターに近づくと、1月15日で閉店するお知らせが張り出されていた。西浅草店のオープンは22年6月。わずか半年余りでの閉店である。ワタミ広報は、浅草の中心街からやや外れたエリアだったことを不振の理由に挙げた。

 から揚げの天才については、22年4月に「はや閉店ラッシュのワタミ唐揚げ専門店」と題した記事を公開している。21年10~11月のピーク時110を超えていた店舗数が、21年暮れから閉店が目立ち始め、22年4月1日に100店舗を割り込んだタイミングで書いたものだ。

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「から揚げの天才」、店舗数の推移
「から揚げの天才」、店舗数の推移
参照:ワタミのプレスリリース、「から揚げの天才」新店情報ページ

 その後も反転攻勢とはならず、むしろそこから本格的な閉店ラッシュが始まった。現在、同店Webサイトの店舗検索で表示される店舗数は60店舗。1月中に西浅草店を含む3店の閉店が告知されている。これまで累計120超の店舗をオープンし、60超の店舗が閉店した。「半減」である。一方の新店舗は、22年5月に2店舗、22年7月に1店舗を最後に、この半年間、新規開店がない。

 店舗数が大きく減ったのは、フランチャイズ契約で複数店舗を運営していた企業が軒並み撤退したためだ。

 10店舗以上を運営していたフランチャイジーの1つが、「カラオケまねきねこ」を全国に520店舗以上展開するコシダカホールディングス。08年に子会社化した女性専用フィットネスクラブ「カーブス」は全国2000店舗に迫る規模で、大量出店の実績がある。そんなコシダカが20年3月、ワタミとから揚げの天才のFC契約を結び、20年4月の加須店(埼玉県加須市)を皮切りに、同年8月にかけて12店舗を出店した。カラオケまねきねこの店舗にから揚げの天才を併設する形だった。だが21年11月に東松山松葉町店(埼玉県東松山市)が閉店し、22年8月までに全店の営業を終えた。新型コロナウイルス感染拡大下では外食のほかカラオケ店も厳しい環境だったことから、カラオケ店にテークアウト店を併設することで集客を見込んだが、期待には及ばなかったようだ。

「カラオケまねきねこ」に併設していた店舗
「カラオケまねきねこ」に併設していた店舗

 もう1つ、10店舗以上を運営していたフランチャイジーが、バイクの買い取り・販売のほか、24時間営業のフィットネスジム「エニタイムフィットネス」やゴルフスクールのFC事業を手掛けるアークコア。同社は20年9月にから揚げの天才のFC契約を締結し、11店舗を運営していた。しかしながらこちらも22年6月にFC契約の解除を発表し、22年7月31日に全11店を閉店。飲食事業から撤退した。22年2月期にから揚げの天才FC事業で4億9100万円を売り上げたものの、セグメント損失1億4900万円を計上。「本事業は当社業績に多大な影響を与えておりました」と撤退のIRニュースで記している。

 から揚げの天才が苦戦する理由は何か?

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