――経験豊富な社員が多い中で、リーダーとして心がけていることはありますか。

「私が語るのはおこがましいですが、基本的には2つだと思います。まず、哲学や理念などに基づき理想の状態を定義したうえで、現在地を正しく認識し、理想と現実をつなぐ方法を決めます。そして、方法が決まれば、そこに最速で向かうことです」

理想を追求、実現は全員で

「理想というものは合議で決めるのはなかなか難しく、リーダーが明確な意思でとことん腹落ちするまで考えて決めるものです。一方で理想と現実をつなぐ方法は、開発メンバーや関係者がいる場所で、全員が納得して決めるべきです。お客様の要望や現実の技術、チームの実力から外れてはいけないからです」

英国王立財団が創設した環境賞「アースショット賞」の最終候補に選ばれCOP26に出席(2021年、英グラスゴー)

――経営者として喜びを感じる時はありますか。

「製品の開発目的が達成された時ですね。災害が起きた時、誰も水に困らない状況をつくることが『WOTA BOX』のコンセプトでした。(東日本を中心に甚大な被害をもたらした)19年の台風19号では長野市の避難所を同製品でカバーでき、入浴に困らない環境をつくりました。全員で取り組んできたのですごくうれしかったです」

――ものづくりとの関わりで心がけていることはありますか。

「技術者が『技術愛』ではなく『人間愛』に向き合えるかが、技術組織の経営にとって重要だと思っています。技術者が一つの技術に集中することを否定しませんが、そうなると余計な装備をつけてコスト高になったり一部の人にしか使えなかったりして、必ずしも良い製品にならないことがあります」

「(米アップル共同創業者の)スティーブ・ジョブズ氏が大事だと言う『デザイン』の考え方も、技術愛から生まれたものではないと思うんですよね。新しい製品が使う人にとってとっつきやすいか、買った人が未来のために投資したいと思えるか、とか、そういう体験の部分が非常に大事だと思います」

――WOTAの製品ではどのような所にそれが表れていますか。

「どちらかというと家電製品のようにものづくりをしようとしています。製品を開封して簡単なガイドを読めばすぐ使えるとか。反対に失敗で多いのは、複雑にしすぎてしまうことです」

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違い許容し「郷」つくる