急な運動かかとに激痛 足底腱膜炎、ストレッチで軽減
在宅勤務が増えて運動不足が心配になり、ジョギングを始めた人もいるだろう。ただ急に頑張りすぎて足底腱膜(けんまく)炎を起こし、歩くのさえ大変になる場合がある。いざというときの対処法や予防策を覚えておこう。
朝目覚めて体を起こして足を踏み出したとき、かかとに激痛が走る。体重をかけすぎないように気をつけて歩いていると治まる。こうした症状について、足の外科センターを置く第三北品川病院(東京・品川)の野口昌彦院長は「足底腱膜炎である可能性が高い」と指摘する。デスクワークで長時間座っていて、再び歩き出すと痛みを感じる人も少なくないという。
足裏にはかかとから指の付け根まで「足底腱膜」が広がっている。歩いたり走ったりして足底腱膜への負荷が高まると、傷ができるなどして痛みが起こる。
急に走ったり、たくさん歩いたりするようになった。立ち仕事が増えた。地面からの衝撃が伝わりやすい靴を履くようになった。こうしたことがきっかけとなりうる。野口院長によると、肥満が誘発することもある。体重を減らすだけでも症状が和らぐ例があるそうだ。年齢を重ねて足底腱膜が硬くなっても起こりやすいとされている。
中高年に比較的多いが、帝京大学スポーツ医科学クリニック(東京都八王子市)の笹原潤院長は「若い人でも陸上やラグビーといった走る機会の多いスポーツをする人に起こりやすい」と話す。
継続的な激しい運動は足底腱膜に負荷がかかる。剣道やバドミントンといった足を踏み込むことの多いスポーツでも痛みが出やすいという。「普段体を動かしていない人が準備運動もせずにジョギングなどを始めると、膝だけでなく、足底腱膜にも痛みが出てしまうので注意してほしい」と警鐘を鳴らす。
症状が出たら、専門の医療機関を受診する。問診や触診のほか、超音波検査や磁気共鳴画像装置(MRI)で足底腱膜の状態を診てもらうことになる。治療に当たっては消炎鎮痛剤(湿布や塗り薬、飲み薬)で痛みを抑える(対症療法)、足裏のストレッチをする(理学療法)といった方法が考えられる。
野口院長は「足裏ストレッチを毎日することで改善する場合が多い」と語る。ストレッチには例えば両手でかかとと足指を持ち、指をそらして足裏をのばす動きがある。1回あたり20秒、1日に10回程度を目安にするとよい。
靴にインソール(中敷き)を入れるのを勧められることもある。それぞれの足裏の状態に合わせたものを使うことで、足底腱膜への負担を減らす。医師に足底腱膜炎と診断されれば、保険が適用される。購入費用は本人3割負担のケースで1万~2万円程度になる場合が多い。
生活や仕事に支障が出るほどの強い痛みはステロイド注射で抑える手もある。
笹原院長は「インソールの使用、ストレッチなどの理学療法をしっかりすれば、痛みが再発しないケースが目立つ」と説明する。
一方、理学療法を数カ月間続けても症状が改善しない場合は難治性足底腱膜炎と診断される。この場合、体外で発生させた衝撃波を患部に照射する「体外衝撃波治療」も選択肢に入ってくる。条件を満たせば保険も適用される。
最近では「自分の血液から血小板のみを分離し、患部に注射する治療法も出てきている」(笹原院長)という。ただし保険適用外でもあり、まだ一般的ではないという。
「痛みを感じたら、早めに医療機関を受診してほしい」と野口院長。いったん痛みが引いても再発しやすいといい、足裏のストレッチなどを続けるよう心がけたい。
(ライター 仲尾 匡代)
[NIKKEI プラス1 2021年11月13日付]
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