ただ、暑い時期は熱中症予防のための水分補給が欠かせない。胃腸の働きを低下させず補給するには、常温か温かいものを少しずつこまめにとること。汗をかいたら塩分などのミネラルも補給する。
渡辺院長は「たかが夏バテと放置すると、秋になっても不調が続く『秋バテ』になることもある」と注意を促す。それを避けるためには、今から秋に向けての養生が大切だ。川嶋特任教授は「暑くても体を冷やさないこと。飲食物に気を使うだけでなく、睡眠時におなかを冷やさないようにしてほしい」と助言する。
運動で体力と自律神経の調節力を高めることも大切。「目安は自分にとって少しきついが続けられる運動。1カ月続ければ自律神経が整う。日常生活では『階段は無料のジム』だと思って積極的に活用してほしい」(川嶋特任教授)
ウオーキングもいい。渡辺院長が勧めるのは、顔をまっすぐ前に向けて胸を張り、おへその上あたりをコンパスの頂点とイメージして大股で早歩きする方法。まずは10分程度から始める。
夏バテだと思った不調に思わぬ病気が隠れていることもある。「1カ月以上不調が続く場合や、急激に激しい症状が出たら要注意」と東邦大学医療センター大森病院総合診療・急病センターの佐々木陽典講師は警鐘を鳴らす。
1カ月以上続くだるさは甲状腺疾患、急激な激しい倦怠感(けんたいかん)は心筋梗塞、突然の激しいめまいや頭痛は脳卒中の可能性がある。佐々木講師は「こうした場合には、すぐに受診してほしい」と話す。
(ライター 武田 京子)
[NIKKEI プラス1 2022年8月13日付]