なぜ問題を繰り返す 根本を解決する「上流思考」とは『上流思考』

私が以前、ホテルのマネージャーをしていた現場で、宿泊予約のダブルブッキングが頻発していた。お客様への謝罪、近隣ホテルの手配などで急場をしのぐのだが、また発生する。なぜ問題が繰り返されるのか。

それを解くヒントが、本書『上流思考』(桜井祐子 訳)にある。本書では、問題が発生してから対処することを「下流の介入」、問題が起きないよう取り組むことを「上流の介入」とし、下流から上流に向かうための思考法や、上流の介入はなぜ難しいのかなどを解説している。著者のダン・ヒース氏は、米デューク大学ビジネススクール社会起業アドバンスメントセンターのシニアフェロー。

土壇場の対応は快感という罠

問題を根本から解決しようとする上流思考が難しい理由の1つに、著者は「トンネリング(視野きょうさく)」を挙げる。日々の対応に追われ、そもそも問題がなぜ発生するのかを考えられない状況のことだ。8つの病院の看護師を調査すると興味深いことがわかった。なんと看護師たちは、平均90分に1回という頻度で、予期せぬ問題の対応に追われていたのだ。それも、赤ちゃんの足首につけられているセキュリティータグが無くなるなど、看過できない案件が繰り返し発生していたという。

やっかいなのは、土壇場を切り抜けるのは気分がよく、達成感があることだと著者は指摘する。現場では、目の前の問題に対処することが正しいのだ。しかし、それでは同じ問題が繰り返されてしまう。

そこで著者は、安全上のニアミスなどを発表し合うミーティングを設けることを提案する。問題を見える化し、共有して、背景にある原因を解決するアプローチをみんなで考えるのだ。とはいえ、こうした機会は自然発生的には生まれにくいため、意識的に上流思考を持とうとする必要があると指摘する。

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