ユーザーの興味を熟知する優秀AI
TikTokについては、流行る理由が他にもある。実は他のSNSに比べて、レコメンド(おすすめ)機能が非常に優秀なのだ。独自のアルゴリズムが、ユーザーの視聴歴などから興味を持ちそうなコンテンツを予測、それをランダムに配信してくれるのである。自分にぴったりの動画が次々に上がってくるので、ユーザーは知らぬ間にやみつきになってしまう。
インスタグラムやツイッターは、どちらかと言うとプル型のアプローチで、ユーザー自身が気になるワードや相手を選択し、それらをフォローすることで、欲しい情報が得られる。一方、TikTokはプッシュ型であり、何もしなくても、自動的に配信されてくる動画を楽しむことができる。
プッシュ型のおかげで、思いがけず面白いコンテンツを見つけられたりもする。何気なくテレビを見ている時に、偶然、良い音楽や俳優を発見して驚きや喜びを味わうように、TikTokのレコメンド機能も、予期せぬ出会いを提供してくれると著者は解説する。
近ごろは、ラジオのように楽しめる音声メディア「Voicy」も話題だ。TikTokやこうした新しいサービスは、テレビやラジオといった旧メディアがプッシュ型のサービスとなって復権しているとも言える。本書をめくりながら、今後、どんなサービスが人々を楽しませるのか、またビジネスにどう活用できるのか、考えをめぐらせてみてはいかがだろうか。
今週の評者 = 川上瞳
情報工場エディター。大手コンサルティングファームの人事担当を経て、書評ライターとして活動中。臨床心理士、公認心理師でもある。カリフォルニア州立大学卒。
情報工場エディター。大手コンサルティングファームの人事担当を経て、書評ライターとして活動中。臨床心理士、公認心理師でもある。カリフォルニア州立大学卒。