「they」は単数? 時代とともに変化する英語『英語の新常識』

4月8日に112話で完結したNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」は、母娘孫3代、1925年から2025年までを描いた壮大なサーガ(年代記)であった。100年の物語を貫く軸の一つがラジオ英語講座だった。

毎朝楽しみに見ていたのだが、ちょっと気になるシーンがあった。65年生まれの3人目のヒロイン、川栄李奈さん演じる大月ひなたが、太平洋戦争で亡くなった祖父から受け継いだ英語辞書を使って勉強していたのだ。感慨深いシーンではあるのだが、そんな古い辞書では、もう使われなくなった表現なども覚えてしまうのでは、と少々心配になった。

言葉は生き物であり、時代の風潮や事件などによって使い方が変化する。特に英語は国際語であり、世界中に膨大な人数の使用者がいる。とりわけ変化しやすいのではないか。

本書『英語の新常識』は今なお変化し続ける英語の最新の言葉や使われ方を紹介している。著者の杉田敏氏は元NHKラジオ「実践ビジネス英語」講師で昭和女子大学客員教授。

目立つ人種やジェンダーへの配慮

本書で紹介される新しい英語の言葉や用法で目立つのは、人種やジェンダーなどに配慮した言い換えだ。人種問題については、blacklist(要注意人物[商品、組織]名簿)が「negative list」、blackboard(黒板)が「chalkboard」、blackout(停電)が「power outage」などというように代替される傾向にあるという。

興味深いのは「they」の用法。英語の授業では、人称代名詞として使う場合「三人称複数」の「彼ら」と習うが、2010年代から、「singular they」という「三人称単数」の使い方がしばしばされるそうだ。nonbinary(性別という枠組みで自己認識をしない)の人に配慮し、heやsheの代わりに使われる。ただしbe動詞はisではなくareというから少々複雑だ。

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