ビル・ゲイツが導く脱炭素の道 技術が世界を変える『地球の未来のため僕が決断したこと』

日本政府が2050年カーボンニュートラル宣言を発し、二酸化炭素(CO2)など温暖化ガス排出量を全体として実質ゼロとする目標を掲げたのは2020年のこと。財政や安全保障といった政治課題を押しのけるほど、30年先の気候は重要なのだろうか。

その通り、いま気候変動問題を放置すれば人類はほぼ確実に壊滅的な影響を受ける――そう訴えるのはなんとビル・ゲイツだ。熱心な慈善活動家としても知られるものの、マイクロソフト創業者と環境問題という取り合わせはどこか意外でもある。

なぜ気候変動対策に目覚めたのか。何を目指し、どんな具体策を描くのか。本書『地球の未来のため僕が決断したこと』(山田 文訳)はその答えがまとまったもの。事態の分析、政策への提言、そして個人としてできることなど、多角的に、かつわかりやすく論じている。

「炭素ゼロ」を考えるシンプルな思考法

「ゼロ」にこだわる理由から本書は始まる。世界で年間510億トン排出される炭素を数十年のうちにゼロにしない限り、地球の平均気温が上昇し、わずかセ氏1、2度の違いでも経済や政治が大混乱に陥る、というのが科学的なファクトだからだ。

だが、エネルギーを大量に使う現代生活ではあらゆる場面で炭素が発生する。510億トンという数字も想像がつかないし、その内訳も複雑でどこから手をつけていいのかわからない。

そこでゲイツは、シンプルに人間活動を「電気を使う」「ものをつくる」「ものを育てる」「移動する」「冷やしたり暖めたりする」の5つへと整理する。510億トンにどれだけインパクトを与えられるかを明確化し、有望な取り組みを見極めているのだ。例えば年間炭素排出量の最も多くを占める「電気を使う」の項目では、全米を網羅する送電網のコンピューター・モデルをつくる事業に投資。再生可能エネルギーを国レベルで効率よく使う仕組みを本気で整えようとしている。

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