2021/10/24

「ウイスキーのヒットがなければ廃業していたかもしれない」。19年秋の房総半島台風は地域の観光業にも甚大な被害をもたらした。新型コロナウイルスの感染拡大による飲食店への営業制限が追い打ちとなり、日本酒の需要は一段と落ち込んだ。ブレンドなどを試行錯誤して販売にこぎ着けたウイスキーが期せずして経営を支えた。

今後は東京都内など県外にも問屋経由で販売を拡大していく。「値を崩さないように売っていきたい」。22年には100%自社製の高級ウイスキーの投入も検討し、日本製ウイスキーへの評価が高まるアジアなどへの輸出も思い描く。

久留里地区は戦国時代に房総を治めた里見氏が本拠地とした久留里城の城下町として栄えた。江戸中期に活躍した新井白石が育った地でもある。駅前の広場をはじめ至る所に水くみ場があり、住民に親しまれている。

乳酸菌などを含む「生きた水」は県内で唯一、環境省による平成の名水百選に入った。手近な材料と人力によって自噴井戸を掘り当てる「上総掘り」も一帯が発祥地。その技術は水不足のアフリカなどで再評価されている。5つの蔵元が集まる酒どころでもある。

(千葉支局長 真鍋正巳)

[日本経済新聞電子版 2021年10月14日付]