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ピンク・レディー、山口百恵、山本リンダらのヒット曲を手がけた人気作曲家で2021年4月に文化庁長官に就任した都倉俊一さん(74)は国際経験を生かして文化立国づくりに奔走する。目標は「輸出で稼げる文化芸術産業の育成」。売れる仕組みを理解し、世界に仕掛けるプロデュース機能の必要性を説く。

――文化立国づくりの旗振り役として強力なリーダーシップが求められていますね。

「新型コロナウイルスの感染拡大でイベントや興行の自粛が続き、国内の文化芸術活動はかなり疲弊しています。活動が停滞したままでは文化発展の芽がしぼむばかりか、有力な人材も育ちません」

「伝統文化を保護することも重要です。でもさらに海外市場で外貨を稼げるような文化芸術産業を生み出さないといけない。守りだけでなく攻めの発想も必要になる。国際的な視野から官民一体で文化芸術活動を後押しできるプロデューサーのような役割が期待されていると感じます」

「参考になる例がK-POP、映画、ドラマなどに代表される韓流文化でしょう。1997年に通貨危機に直面した韓国は国内経済を立て直すために国家戦略を打ち出します。その目玉がエンタメ産業の海外進出。この20年間で韓流文化は欧米のほかアジア、中東、南米、アフリカまで広がり、国家のイメージの向上に大きく貢献しています」

――外貨を稼ぐ文化芸術産業を育成するにはどんなプロデュース能力が必要ですか。

「広い視野で情勢を客観的に分析し、相手をよく知ることが重要だと思います。韓流の場合、音楽や映像のプロを育てる大学や専門学校を国内に設置し、SNS(交流サイト)を効果的に活用して話題を作り、ファン層を世界に広げました。曲作りも周到です。動画配信を意識して、リズムの良いサビを連呼する歌詞や印象に残る踊りなどを組み合わせて若者の心をつかんだ」

「またタレントを日本や中国、米国の市場に売り込むために現地の言語や生活様式を身に付けさせるローカライズ(現地化)戦略を取ったり、初期投資の回収が難しい中南米や中東の市場では政府がコンサートの開催を支援したり、国家戦略で文化発信に取り組んでいる。BTS(防弾少年団)などが好例ですが、ファン組織を通じてブームを作り上げる戦略も巧みです」

「つまり、ヒットのメカニズムを理解することが欠かせない。多少強引なくらい積極的に仕掛ける姿勢も時には必要です。日本は国内市場が大きいので海外で稼がないといけないという危機感が薄かった。ある意味、恵まれていたんです。でも海外での文化ブームが日本のイメージを高め、日本製品の購買や来日観光客数を増やす。経済面の相乗効果は計り知れません」

文化庁長官・作曲家 都倉俊一氏

文化庁長官・作曲家 都倉俊一氏

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