矢崎さんは「使う梅干しによっても変わってくるが、煎り酒は相対的に塩分量が少ない割に味をしっかり感じられる」と話す。味見をして塩分が足りないと感じたら、しょうゆを少量加えて味を調えてもよいという。
煎り酒は塩分濃度が低く、原則として保存料も使わないため長持ちはしない。ただ熱湯消毒をした清潔な容器に入れ、冷蔵庫で保存すれば2週間ほどは持つそうだ。
活用法も様々だ。味が淡泊な白身魚や貝類の刺し身との相性がよく、食材のうま味や風味を存分に味わえるのはよく知られている。「鮨(すし)ト酒 日々晴々」(東京・新宿)ではタイなど白身のにぎりずしに自家製の煎り酒をハケで塗って提供している。
家庭で味わう場合、まずは食卓に置くしょうゆの代わりとして、刺し身や冷ややっこなどを食べる際に使うところから始めてみよう。
銀座三河屋の神谷さんがお気に入りの煎り酒を使った一品は卵かけご飯。「炊きたてのご飯に生卵をほぐしてかけ、わさびを少しのせて、さらに煎り酒をたらして食べるのがいい」
ゆずこしょうや粉ざんしょうといった香辛料、ごま油やオリーブオイルと一緒に使うのも手だ。あえ物にしたり、ドレッシングにしたり、使い方の幅が広がりそうだ。煮魚や焼き魚の下味を付けるのに使えば、魚の臭みを取ってくれて食べやすくなる。
煎り酒は梅干しのほどよい酸味もあって、さっぱりと食べたいときに重宝する。食欲がなくなりがちな夏にもぴったりだ。食卓に煎り酒を用意して暑い季節を乗り切ろう。
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夏の食卓に おすすめレシピ
矢崎さんに煎り酒を使ったおすすめ料理を聞いた。

■つゆに/煎り酒のぶっかけそうめん
ゆでて冷やしたそうめんにツナ、大葉、トマトなどをのせ、冷やした煎り酒をかける。
■ドレッシングに/夏野菜の焼きサラダ
切って焼いたナス、パプリカなどに煎り酒とオリーブオイル(各大さじ1)をかけて冷やす。
■茶漬けに/焼きジャケの冷やし茶漬け
水洗いしたご飯にほぐした焼きジャケやミョウガ、いりゴマなどをのせ、氷水と煎り酒をかける。
(ライター 土井 ゆう子)
[NIKKEI プラス1 2022年8月13日付]