2021/10/24

明確に“ドライバーズカー”

ホンダはこれまで明確なプラットフォーム戦略をうたってこなかったが、新型シビックは、複数車種への展開を想定して主要部分をモジュール化したプラットフォームをもとに開発されたという。とはいえ、そのヒナ型となったのが、ほかでもない先代シビックで新開発されたプラットフォームだ。というわけで、新型シビックそのものの骨格設計やサスペンションの基本形式は、従来モデルの改良型となる。

新型シビックはそのうえで、高張力鋼板の使用比率拡大や、アルミボンネットと樹脂バックドアを採用した上屋構造、格子状のフレーム設計に構造用接着材の適用を拡大したフロアなど、高剛性化と軽量化を促進させた車体構造となっている。またサスペンションでは、各部の徹底したフリクション低減策が目をひく。

その走りはというと、8代目が日本上陸したばかりの競合車「フォルクスワーゲン・ゴルフ」にも似て、“熟成の味”という印象が強い。今回の試乗ルートには中央自動車道・小淵沢IC付近のアップダウンと高速コーナーが連なるルートも含まれていたが、そこでのヒタリと安定した直進性と絶大な接地感は、見事というほかない。新型シビックのダイナミクス性能は、全方位で要求水準が高い欧州の交通環境でまず仕上げた後に、各マーケットに合わせて微調整するという手法で開発された。新型シビックの高速性能も、そうした環境下での開発のたまものといわれれば納得したくもなる。

国内向けのシビックが18インチの「グッドイヤー・イーグルF1アシンメトリック2」を履いていることからも分かるように、それはけっこうスポーツ寄りの仕立てである。街なかでの乗り心地は基本的に引き締まり系であることは確かで、クルマ全体の剛性感が高いので不快ではないが、クルマに興味がない家族にウケがいいタイプとはいいがたい。やはりドライバーズカーであることが第一義といえる。

前席には、背もたれと座面に面形状のサスペンションを用いた「ボディースタビライジングシート」を採用。安定した着座姿勢が保ちやすく、長時間乗車していても疲れにくい設計となっている。
新型「シビック」では、ホイールベースの延長により前後席間距離が従来モデルより35mm拡大。後席の居住性が改善している。
タイヤサイズは全車共通で235/40R18。18インチのツイン5スポークホイールはグレードによってカラーリングが異なり、「EX」では切削箇所にダーククリア塗装が施されている。
ボディーについては、アルミ材や高張力鋼板の採用拡大、設計の最適化、従来比で9.5倍という構造用接着剤の多用などにより、軽量化と剛性強化を同時に実現。ねじり剛性は現行モデルより19%向上している。

熟成の進んだプラットフォームの恩恵

だが、ドライバーズカーとしての新型シビックの味わいは、なかなかの逸品である。基本的には動きの少ない引き締まった挙動ながらも、加減速や操舵でカツを入れたときの、滑らかな荷重移動と潤いのあるストローク感は素直に美味だ。ステアリングはロック・トゥ・ロックで約2.2回転というクイックな設定だが、操舵反応そのものが過敏でないのも好印象。それでいて、S字の切り返しなどではフワピタと路面に吸いつく。

こうした敏感すぎず、軽快なのに安定した身のこなしをあえて擬音化すると“カキカキ”というより“スイスイ”といったイメージか。なるほどキャッチフレーズどおり、爽快と形容したくなる味わいだ。さらに、ほぼフルバンプに近い状態で激しい凹凸に遭遇しても、涼しい顔でフラットに吸収してみせる体幹の強さも、乗り味としては爽快である。

こういう、リアルに鍛えられて練り込まれたダイナミクス性能は、同じくプラットフォームをあえて継続使用しつつ徹底して熟成を図った現行「フィット」や「ヴェゼル」にも通じるところがある。

かつてのホンダといえば、モデルチェンジごと、あるいはクルマごとに新機軸や専用設計を入れるのが使命みたいな、よくも悪くも技術者の心意気が最優先の社風だった。それはそれで、ファンがいうところの“ホンダらしさ”の一面だったのだろう。それに、今回も車体のスリーサイズがほとんど変わらないのに車重が先代より増えているあたりは、完全新設計ではない継承・改良型プラットフォームの影響といえそうだ。しかし、その操縦性や乗り心地、そしてパワートレインの一体感を見るに、少なくとも新型シビック(個人的には、現行フィットやヴェゼルもそこに含めたい)では、プラットフォームを継続した利点のほうが大きかったと思う。

コーナリング性能や乗り心地の改善には、ボディー剛性の強化や足まわりの改良に加え、従来モデルより35mm拡大したホイールベースと12mm拡大したリアトレッドも寄与している。
「EX」に備わる10.2インチのフルグラフィックメーターは、大胆な表示レイアウトの変更が可能。各種走行情報に加え、インフォテインメントシステムの設定、運転支援システムの作動状態などが確認できる。
インフォテインメントシステムには、9インチのタッチスクリーンを備えたディスプレイオーディオを採用。「EX」には12基のオーディオを備えたBOSE製のサウンドシステムも装備される。
3連のダイヤル式コントローラーが目をひく、空調の操作パネル。人が触れる箇所については、視覚的な上質感はもちろんのこと、操作した際の手応えのよさや心地よさも追求して設計がなされた。
次のページ
まさに“爽快”の2文字につきる