ホンダ・シビックEX 11代目は熟成の味を堪能

2021/10/24
ホンダ・シビックEX(FF/CVT)/シビックEX(FF/6MT)
webCG

世界的な人気を誇るホンダのグローバルモデル「シビック」がフルモデルチェンジ。約半世紀にわたり歴史を重ねてきた伝統の一台は、この新型でいかなる進化を遂げたのか? ホンダがもてる力の限りを尽くして世に問う、11代目シビックの実力をリポートする。

マニアを泣かせる6段MT

新型シビックの国内仕様は「爽快シビック」という合言葉(ホンダ流にいうと、グランドコンセプト)のもと、2021年9月3日に発売となった。車体はハッチバックのみ。エンジンもひとまず1.5リッターターボのみ。装備グレードは2種類あるが、タイヤその他の走行性能にまつわる部分はすべて共通。どちらのグレードでもCVTと6段MTが選べる。

さて、その新型シビックの初期受注だが、MTが全体の4割近くに達したという。ハッチバックに6段MTが用意されていた先代も3割という高比率だったが、新型はそれ以上ということだ。もっとも、これは正式発売から10日前後時点の数字である。つまり、その大半が実車も見ずに予約した熱烈なファンによるものであることは想像に難くなく、そこは差し引く必要はあるだろう。

しかし、それにしても……である。考えてみれば、いま国内で入手可能な新車で、このように適度なスポーツ性と日常性を両立していて、しかもそれなりの所有欲を満たしてくれるMT車は希少である。そうした、絶対数は少ないが確実な需要を集められれば、日本市場でもまだビジネスとして成立する余地はある。新型シビックがそれを示唆してくれているとすれば、ありがたいというほかない。

そんな新型シビックのMTは、縦横ともにほぼ手首の返しだけで決まるクイックな操作量と、コクッという小気味いいゲート感が心地よい。先代シビックのMTもいいデキだったが、今回はさらにいい。実際、新型シビックのMTは変速機本体こそ先代と同じものだが、シフトノブからレバー、アルミ製ブラケット、横方向の動きをつかさどるバネのレートやピンの精度まで見直されている。最近のモデルでは、MTのラインナップだけはかろうじて残されていても、MT自体の開発はほぼ止まってしまっている例も少なくない。それと比較すれば、新型シビックにおけるホンダの姿勢は、マニア的にはステキというほかない。

11代目となる新型「シビック」。まずは装備や内外装の異なる「LX」「EX」の2グレード構成で販売が開始された。
インストゥルメントパネルまわりはエアコンの吹き出し口を内包したメッシュパネルと、開放的な視界が特徴。上級グレード「EX」には、レッドステッチや合成皮革のセンターパッド、ヘリンボーン柄の装飾パネルなどが用いられる。
心地よい操作感を実現する6段MTのシフトノブ。握りの形状はグレードによって異なり、「EX」には革の巻かれた球状のものが採用される。
6段MTは操作性のよさに加え、デュアルマスフライホイールの採用によって静粛性の高さも追求。ワイドなギアレシオにより、加速性能と燃費性能の向上も図られた。

そこここに進化を感じるパワートレイン

そんなMTだけでなく、今回のパワートレインはエンジンもCVTも既存ユニットの改良型なのだが、その仕上がりはどれも良好だ。1.5リッター直噴ターボは今のホンダで屈指の量販ユニットなので、エンジンそのものは毎年のようにアップデートされており、新型シビックで新しくなったのは基本的に高応答ターボチャージャーのみという。しかし、先代シビックに搭載されていたそれと比較すると、ヘッドからクランクシャフト、オイルパン、ピストンまでが変わっている。

2000rpmも回せば十分といえる柔軟性はいかにも最新の直噴ターボだが、新型シビックでは3000rpmあたりでけっこう明確なさく裂感をみせるのがマニア好みだ。そこから4000rpmまでの最常用領域で、小気味いいピックアップと爽やかな快音を味わえるのが心地よい。

さらに4500rpm、5000rpmと回転上昇に伴ってレスポンスはさらに高まり、リミットの6500rpmまでアタマ打ち感はほぼ皆無。こうした“回しがい”はさすがホンダのエンジンで、これならあえてMTを選ぶ価値もある。また、これほどパワフルで抑揚のあるトルク特性ながらも、過給ラグがほぼ体感できないのは高応答ターボチャージャーのおかげか。

先代ではCVTだけエンジンの最大トルクが絞られていたが、トルクコンバーターが強化された新型では、どちらの変速機でもエンジンスぺックは共通となった。それもあってか、日常域におけるCVT仕様のピックアップ感やパワー感はMT仕様を上回るほどで、開発陣も今回のCVTの制御には絶大な自信があるようだ。個人的には、「スポーツ」モードでなくても小気味よすぎて、エコモードにあたる「ECON」に入れてちょうどいい。それでも、慣れるにしたがってクルマと気心が通じるようになり、最終的には現行CVT車のなかでも、速度の微調整が屈指にやりやすいことが分かった。

エンジンは従来型のユニットをベースに大幅な改良を加えたもので、加速時の応答性のよさや伸びやかさを重視。加速と一体感のあるサウンドも追求された。
CVTはターボエンジンの大トルクに対応するべくトルクコンバーターの性能を強化。全開加速時やブレーキング時に段階的な変速を行う、ステップアップ/ダウンシフト制御が搭載されている。
CVT仕様にはドライブモードセレクターを搭載。「ノーマル」「スポーツ」、およびエコモードに該当する「ECON」の3つのなかから、状況に応じて好適な走行モードを選択できる。
CVT仕様についても、エンジンの回転上昇と加速が乖離(かいり)する、いわゆる“ラバーバンドフィール”は小さく、レスポンスのよいエンジンとも相まって気持ちのいい走りを楽しめた。
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