吉野川の軟水でまろやかな酒 高知・土佐酒造「桂月」

2022/1/23
新酒を瓶詰めする工程をチェックする作業員(高知県土佐町の土佐酒造)

高知県北部、四国山脈の山あい、吉野川の源流に位置する土佐町。自然豊かな地で酒づくりに励む土佐酒造は1877年の創業以来、醸造の肝となる酒米と水を地元から求める。欧州では、チーズやワインの産地の土壌や気候条件などを「テロワール」と呼ぶ。地域に生かされた「土地の酒」の蔵を訪ねた。

年越し間近の2021年末、同社の看板商品「桂月」の新酒づくりがピークを迎えていた。大型の仕込みタンクには大吟醸用のもろみがたたずむ。「蔵人」と呼ばれる作業員がタンク上部に上り、長い棒でゆっくりかき混ぜる。蔵人は心の中で念じる。「おいしくなーれ、おいしくなーれ」

仕込みタンクのもろみをかきまぜる蔵人(高知県土佐町)

「桂月」は高知の文人、大町桂月が土佐酒造の酒を愛したことにちなんだ名前。「大町は土佐の風土にこだわった創業者の考えに共鳴した」。松本宗己社長はこう話し、続ける。「もろみとなる酒米は地元の棚田で育ったものだけを使う」

酒米は高知で2002年に品種登録された「吟の夢」。地元はもともと棚田による米づくりが盛ん。日本酒に等級があった時代、桂月はおいしくて安価な二級酒として高知で親しまれたが、酒米を供給したのは棚田だった。この恵みでもっと美味な清酒を送り出そうと、農家に栽培を働きかけたのが吟の夢だ。