
春の訪れを告げる桜。スマートフォンで撮ったら、実際に見た色と違う……と思うことはないだろうか。桜の花を美しく撮る方法を、フォトグラファーに教えてもらった。
桜の写真で多い失敗は、花が暗く、黒っぽく写ってしまうというものだ。これは、スマホに備わっている「オート露出機能」が原因。自動的に明るさを調整してくれる便利な機能だが、写真全体の明るさからバランスを調整するため、晴れた日の桜は暗く調整されてしまう。桜を撮るときは、自分自身で明るさを調整するほうが失敗が少ない。
その際は、できるだけ露出=明るさを上げること。撮影してから加工アプリで明るくする方法もあるが、最初から露出を補正して撮った方がより自然な写真になる。
iPhoneの場合は、画面をタップすると黄色い枠の横に太陽のマークが表示される。この太陽マークを指で上げ下げして露出を調整する。
iOS14以降を搭載したiPhone11以降の機種では露出の設定を保持することもできる。カメラの画面上部にある「∧」ボタンをタップすると、シャッターボタン近くに「±」ボタンが表れる。これを「+」にすると画像が明るく、「-」にすると暗くなる。最適な明るさにしたら「設定」↓「カメラ」↓「設定を保持」で「露出調整」をONにすればいい。
ただ、同じ桜の木でも花の向きや日差しの当たり方で最適な明るさは異なる。できれば1枚ずつ明るさを確認しながら撮りたい。アンドロイドの場合は、カメラの機能設定などで露出調整する。
桜のはかなげなピンクを写真で表すのは難しい。フォトグラファーの鈴木愛子さんは「青を背景にすると、花の輪郭がはっきりして美しく撮れる。撮影は快晴の日をねらうといい」とアドバイスする。春は花曇りの日も多く、曇り空を背景にすると、目で見るよりも暗く写ってしまいがちだ。晴れたり曇ったりと天気が変わりやすい日は、雲が切れる瞬間をねらって撮ろう。
桜にもさまざまな種類がある。なかでもこれからの時期に見ごろを迎えるソメイヨシノは、白に限りなく近いピンクなので、空の色の影響を大きく受ける。もし青空がなかなか見えないときは、明るさをできるだけ上げて撮ろう。
画面いっぱいに桜を入れると迫力のある写真になる。このとき桜の背後から光が当たる「逆光」や、横方向から光が当たる「サイド光」で撮ると、桜の花びらに透け感や立体感が生まれる。「逆光やサイド光は撮りたいものの輪郭をくっきりと出してくれるので、光に透けた美しい花の輪郭が出る」(鈴木さん)
花に接近して撮ると、枝が目立ちにくいという利点もある。桜の幹や枝は黒々として存在感があるので、写真に写ると花よりも目立ってしまう。花に寄って、枝を極力入れずに撮れば、桜の美しさがより際立つ。このときポートレートモードを使うのもいい。花を前に、枝を後ろにしてポートレートモードで撮ると、背景がほどよくぼやけて枝が目立たなくなる。