生成AI(人工知能)のインパクトから、DX推進の注目株、さらには「記憶」に着目した斬新ベンチャーまで話題に。注目のスタートアップやビジネスの新潮流をVC(ベンチャーキャピタル)が解説する本連載。第7回は、日本での投資に加え、米国を中心に幅広い産業領域や事業ステージが異なるファンド投資を行う、WiL(ウィル、東京・港)の久保田雅也氏に聞いた。

久保田 雅也 氏
WiL パートナー
リーマン・ブラザーズ証券会社、バークレイズ証券の投資銀行本部で、インターネットや通信、メディアセクターを担当。インベストメント・バンカーとして、東京、ニューヨーク、香港の各オフィスで、未上場ベンチャーから上場企業に至る多くの企業との取引案件を主導。2014年1月、WiL設立とともにパートナーとして参画

テキスト生成AI「ChatGPT」登場でAIトレンドに変化

――2023年のスタートアップのトレンドとして注目しているものは。

久保田雅也氏(以下、久保田) まず触れておきたいのが、世間の話題をさらっている対話型AI(人工知能)チャットボット「ChatGPT(チャットGPT)」に関連する新潮流です。米マイクロソフトが出資する新興企業の米OpenAIが開発したテキストを生成するAIのプラットフォームで、質問などを入力すると、まるで人間のように詳細な回答を返してくれます。質問に答えるだけでなく、例えば「メタバースの説明を500字以内で書いて」などと入力すると、AIが瞬時に説明文を生成してくれます。

 こうしたAIを使った自然言語処理の技術革新は、今最もホットな話題のひとつであり、驚異的なスピードで進化しているのが現状です。チャットGPTはOpenAIによるテキスト生成AI「Generative Pre-trained Transformer(GPT)」のバージョン3(GPT-3)を基に発展させた新モデル「GPT3.5」がベースになっていますが、マイクロソフトが検索エンジン「Bing」にGPTを組み込んだり、さらに進化させたGPT-4の登場も予定されたりするなど、まさに日進月歩の様相となっています。

米マイクロソフトは、OpenAIの大規模言語モデルを搭載した検索エンジン「Bing」とWebブラウザー「Edge」を発表。検索、ブラウジング、チャットをひとつに統合する新しい体験を目指す(画像/マイクロソフトのプレスリリースから)
米マイクロソフトは、OpenAIの大規模言語モデルを搭載した検索エンジン「Bing」とWebブラウザー「Edge」を発表。検索、ブラウジング、チャットをひとつに統合する新しい体験を目指す(画像/マイクロソフトのプレスリリースから)

――チャットGPTはライターの仕事を奪うともいわれています。まだ文章や事実関係を間違うなど問題はありますが、これも進化する中で精度が高まっています。

久保田 ただ、影響が及ぶのはライターの仕事だけではありません。ポイントは、企業のホワイトカラーの仕事を代替する可能性があるということです。

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